勢いにのる皇帝同盟と、衰えつつある協商とが対立する世界。舞台は中立国であるドラゴンフライ皇国。 国内は、皇帝同盟と組もうという艦隊派と、協商と組もうという条約派とが争っていたが趨勢は前者寄りに。とはいえ皇帝同盟の国家間の関係は協商との対立に決着がつけば同盟を組んだ4つの帝国同士のエゴがぶつかりあうこと紛うことなく、なので世界を現状で維持することが本邦の進むべき道である、と考える協商寄りの条約派を主人公としたお話。
皇帝同盟有利とみた戦闘で協商が勝利。これを機に、左遷された海軍中将が、協商の国家にある大使館に駐在武官として乗り込んでいく。当人は貴族で金があり、コストは厭わない。正論を振りかざすモンスター、人格はひどく嫌味と皮肉たっぷりだが清廉潔白の硬骨漢。「だからこいつは危険だ」「人間として正しいことと政策が正しいことは別物だというのに」「こいつは『良い貴族』であるという一事で『黒を白にしてしまう』」政敵にそう評される人物である。
大使館に着任当日、大使との対面をわざと遅らせ時間を作りその短時間で大使を屈服させる証拠を見つけて取引する。 なお当人は人の心がわからない、という自覚があり、それを副官に告げ、手助けをして欲しいと頼む。副官となった人物は士官学校を首席で卒業した女性で、かつ先帝と血縁のあるという設定。なので配属が決まらず厄介払いで中将の下につけられたと。
主人公は、昨今の作品だと「薬屋のひとりごと」の漢太尉、羅漢みたいな人物ですかね。まぁこういうフラットなキャラクターで原理原則があって、しかも正論を持ち出して持論に引き込もうとする人物がいると話を動かしやすいので。「周囲に合わせるんじゃなくて周囲をぶちのめしてきた口」の人物は、魅力的は魅力的ですしね。
面白いのだが、序盤にある戦闘シーンの絵がなぁ、うーん、うーん、と思っているうちにレビュー忘れました。 最新刊4巻が刊行済。
ドラゴンフライ皇国は、世界に覇を唱える『皇帝同盟』と結ぶべきだという主張の『艦隊派』、世界の現状維持を望む『協商』との友好関係を続けるべきだ、とする『条約派』の2つに分かれ内部対立を深めていた。『皇帝同盟』へ属するべき、バスに乗り遅れるな。という風向きが強くなる中、ユトランド上空の戦争で大きく戦況が変わる。結果、新品中尉・アメリアは関係が悪くなりつつある『協商』国家ブレタニケに『条約派』の正論モンスター海軍中将・ハラルドと共に駐在武官として乗り込むことに! 一歩間違えば、世界大戦。国、大使館、貴族、マスコミ……あらゆるものを利用する、『英雄を必要としないため』の闘いが始まる。これは、国家の趨勢を懸けた駐在武官たちの本格外交業務戦記である!
通りかかった家で訪ねてきた人が叫び声をあげていた。密室の家の中には変死体が。 すかさず現場写真をとったヒロインのしごとは週刊誌の記者。警察では自殺と考えているが、 グラスになみなみに注がれたワインなど不可思議なことがあり、彼女は真相究明のため、 捜査一課にいる先輩を飲みに誘う。
ゴシップ記者ものか、とか警察が情報漏らすなよ、などと思いつつ、ひとりふらりと入ったキラー通りのワインバーでソムリエに相談するうち、事件の真相が見えてくる。猪突猛進で犯人にも体当たり、という 危なっかしい人物ではあるが警察も殺人犯が逮捕できるので大歓迎、か。
ワトソン的な女性記者がかけまわり、その材料をもとに安楽椅子探偵さながらソムリエが解き明かす、 という形で毎回話を続けていくつもりなのか。一巻は2エピソードとも殺人事件だったが、 このまま殺しがいっぱい起こるのか?これ。
巻末では他社作品で著者名義も違う「神の雫」の広告あり。「神の雫」新作では本作の広告が出ていたような。なおペンネームを使い分けていることを尊重して同名義の作品のみを著者他作品としてリンク。いや、安童夕馬、青樹佑夜、龍門諒、亜樹直、有森丈時、伊賀大晃とか樹林伸氏のお仕事は正直追いきれずに漏れそうなので……。
謎多きソムリエ“キラーさん”が、隠れ家的ワインバーにいながらにして難事件を次々と解決する「安楽椅子探偵ミステリ」の傑作、ここに誕生! 大ヒットワイン漫画『神の雫』原作者による会心作。ある日、密室殺人の現場を目撃し、取材を進めることになった若手女性記者・真希あかね。偶然迷い込んだワインバーのソムリエに状況を説明すると、彼は豊富なワインの知識を交えながら事件解決のヒントを提示する――。
賊に襲われたところを救ってくれたことで剣も魔法も堪能な 王女殿下付きの近衛兵に恋したヒロイン。 しかし相手は王女と恋仲とも噂され、でも恋心だけは密かに持ち続けた。 そんな彼女に持ち込まれた縁談はまさに、彼とのもの。 しかしこれは王命によるもので、先方の家の意向でもなく、 近々成人の儀を迎える王女の側に未婚の兵士がいては駄目だという理由から のものだった。
そんな経緯と噂と王女の都合で忙しいことから、 結婚相手の想い人は王女であり自分とは偽装結婚だと 思い込むヒロインのお話。 とはいえ自身は彼のことがずっと好きで、ちょっとしたことで 舞い上がり、しかしそんなことはないと沈み込み、 という精神状態ジェットコースターもの。
初々しいといえば初々しい、鬱陶しいといえば鬱陶しい、 新婚なのにかわいそうといえばかわいそうなお話。 とはいえまぁヒロインの思い込みでしかないのだが、 そんな思い込みを抱えながら結婚することになるのは 大変だろうなと思うお話。 原作はどういう話なのかなと思ったら版元フランス書院なのか。まぁ10年以上前からティーンズラブのレーベルあるしコミカライズも珍しい話ではないのか。
伯爵令嬢オデットは、憧れの近衛騎士アルフォンスと結婚することなった。しかし、その結婚は王命によるもの、彼の意志によるものではなかった――。ある雨の日、賊に襲われたオデットの危機を救ってくれたのが、剣も魔法も一流の近衛騎士アルフォンスだった。その美しい姿にも魅せられて恋に落ちたオデットだが、ある噂を聞いてしまう。実はアルフォンスは王女と恋人同士だというのだ。彼のことは諦めつつも、ひそかに想い続けるオデットの元に、数年後、縁談が舞い込む。その相手は、なんとアルフォンスだった――。王女と近衛騎士の禁断の愛を隠すための結婚、そう知りながらもオデットは憧れのアルフォンスとの結婚を受諾する。それは悲しい恋の始まりだった――!?WEB発の人気小説をコミカライズ!※この作品は同タイトル分冊版の1〜4巻を収録した単行本版です。重複購入にご注意ください。
著者好きな人がきっちりハマる、期待通りだが期待以上の作品。
洋食屋のバイトでコックをしていたのだが店を閉めるということでクビになったヒロイン。 母は昔歌手で今は美容家、父は幼い頃に家を出た。今住んでいるのは 車の整備士をやっていた祖父のガレージで、祖父が亡くなった高校生の頃から なのでかれこれ8年。長年連れ添った老犬が亡くなったその日、浮浪者のような風体の 青年が通りがかり、行き掛り上、迎い入れて食事も提供。すると、家はないがお金はある、 という彼から、ケータリングの仕事を一緒にしませんか、と持ちかけられる。
まぁありえない流れなのだがそのファンタジーをファンタジックに描き切るのが著者の強み。 昔歌手だったという母がよく歌ってくれたのがサラ・ヴォーンの「バードランドの子守唄」で ヒロインの名前もサラ。そして彼女が歌うと愛犬がいつも遠吠えした、というエピソードを挟み込み、 題名の由来も引っ張らず早々に回収。
なお女性と男性双方には、親と不仲というか関係性が薄いという共通点があり、 男性の家の事情もその後のエピソードで語られる。そんな共通点を持つ二人の、 ビジネスパートナーから始まる恋物語、なのかどうかは知らん。
そして作品にはヒロインの父の霊というものが登場、 生霊だというのでどこかで生きているらしいが、それがヒロインと毎日のように会話をする。 ただし一日に3分しか現れることができない、という設定つき。 この辺の飛び道具がうまくファンタジー風味を増している。
普通に見えて突拍子もない話を入れ込んでくるセンスがとても好みで続刊が楽しみ。
コックのバイトをクビになり一緒に暮らす「家族」を失ったサラの前に長身長髪で髭面の男、アキオが現れ、サラの人生は静かに、しかし大きく動き出す。今始まる、ホットでクールなグルーヴィン・ラブコメディ!!
フランス、パリ。日本人の少女、青夜は母の指導のもとレッスンと音楽会と読書と世界旅行に日々を費やしていた。そんな母ローランと娘青夜のもとに3年ぶりに訪れたのは叔父である神咲雫。そこで母は雫と飲んでいるワインの香りのイメージを娘に語らせる。青夜は、早逝した遠峰一青の娘。
ということで「神の雫」2部というだけあり前作を読んでいたほうが話の目指す方向と登場人物設定に関してはスムーズに理解できるが、そういう設定なんだと飲み込める人なら前作未読でもすっと入り込める仕上がりのワイン話。探索というか香りと味に導かれワインの世界にダイブする話なので、ある種のSF感あり。その表現が更に深化しており、ファンタジーとしての完成度が増している。
父が残した遺言を読むために、叔父に課せられたワインイマジネーション選手権WIC世界大会優勝に向けて参加するヒロインというのが物語の骨格。物語としてはスポーツものによくある料理系も踏襲したスタイルで珍しくもないが、そこに一巻の時点ですっと進められるのは続刊だからこその特権、絵と表現は素晴らしく紙書籍ならワイド版で出すのが良いのではと思うくらい。そういう点で電子版のほうが、精緻な絵であったり細かい部分を見たい場合には向いていそう。この一巻を読んで、前作を読み返したい気分になった。
衝撃の結末で幕を閉じた「神の雫」を巡る神咲雫と遠峰一青の死闘から時が経ち、舞台はフランス。世界中を旅する雫は、パリのローランのもとに立ち寄る。そこへやってきた“鼻の利く少女”の正体は──。「ワインを巡る終わることのない旅」が今、再び幕を開ける──。
漫画家の仕事場が舞台。漫画家と旧知のチーフアシスタント、そしてアシスタント歴一年の3人の職場で語られるのは、アシスタント歴が7年ほど、その後の漫画家歴が10年以上ある人物が経験したお話の数々。
最初のエピソードは仕事現場に警察が捜査令状を持って押しかけてくるというお話。この話はつかみとしては良いが面白くしようと盛っている感が立ってしまって正直さほど惹かれず寧ろ引いたのだが、続く話は漫画家稼業ど真ん中なエピソード。背景描くのが面倒と思ってしまったアシ一年めが、「背景とかってプロになったらアシスタントさんに描いてもらうじゃないですか/覚えても使わないようになる技術だから…/なんかむなしいなって最近思うんです…」と言ったことから語られるのは、それが口癖だった漫画制作を軽視したヤバイアシさんのお話。駄目な人をあげつらう話としてよりも、そんな人物を漫画家がどう対応しようと観察していたかの話として読むとなかなか興味深い。
その後も、アシスタント経験なく若いうちにデビューした作家のヘルプに入った話、血便で病院に行き肝臓に腫瘍が見つかり精密検査をした話、メールできた仕事のオファーで舞い上がるが実態は怪しい代物であったという話、原作付き作画の話、と続き、どれも興味深く内容も話運びも面白い。内容はエッセイマンガ風だが、簡略化されずにきちんと描きこまれた絵で普通のストーリーものと遜色ないのも臨場感あって読み手を引き込む。そして最後のエピソードは前半で巻またぎにする合本版の構成は正しい。これは続きが読みたい。
「漫画家」…それは、一日中机に向かい、黙々と地道に作業をこなす仕事――。
キャリア10年を越える五百住(よすみ)ジローの仕事場も、またそのうちの一つだった…ハズ…なのだが!?
漫画家の宿命なのか、それとも本人が引き寄せているのか!? 事件&珍事の連続で大騒動を巻き起こす!
警察によるPC没収、ヤバいアシスタント、若すぎる連載作家の末路、蝕まれる健康… ひとたび蓋を開けてみれば、業界の荒波を生き抜く作家ならではの悲喜こもごもが満載! 夢を売るかたわらで、誰もが格闘しているのはひたすらに目の前の「現実」で…?
みんなが一度は憧れるクリエイターの第一線、華やかな作家稼業の『裏』側――覗いてみない? v ※こちらには【第1話〜第8話】が収録されています。
他責女のめちゃくちゃぶりを描くお話。読んでいてムカムカするが、こんな人実際にいるかなというと、まぁたまにいますよね……。
電車内でコーヒーを飲んでいて乗客にひっかけてしまった女性。しかし私のパーソナルスペースに入ってきたのはそっちだろう、ワタシは悪くない!と言い放つ。さらに悪いのは急ブレーキをかけた運転士だともいい、それを他人のせいにするなと咎めた相手に恫喝するのか脅迫するのかと言ってカメラを向け動画をとった挙げ句それをSNSにあげて拡散する。彼女は職場であるハイブランドなアパレルショップでもアクロバティックな他責理論を炸裂させ、注意すればパワハラだと言い出すので腫れ物扱いをされていた。
そんな彼女のいる店に新たに配属されたのはパリ本店から派遣されてきたアドバイザー。対抗心を燃やした他責ヒロインは、売上がたてられそうな客の担当を横取り、勝手にプレミアバッグを斡旋するが、その客が逮捕されたと警察から連絡が来て始末書沙汰に。加えて先の電車内動画も、彼女があげた一部ではなく揉め始めからのフル動画がアップされ炎上。彼女はアカウントを削除して逃亡するのだった。
うん、こういうアカウント、よく見ますね……。話としてはまぁ苛つくというかこれどういう気持ちで読めばいいのかな一応これがヒロインなのよね改心するのかしらんいや無理だろう天罰くだるまでの話なのかなどうなんだろう。書籍紹介文には32歳と書いてありまぁどんな年齢でもいるとは思うのだが、その年齢までこの状態でハイブランドで仕事続けられるのか?という疑問はありつつ。転職繰り返している感じしか浮かばないんだけどなこの手のタイプ。
アパレルショップ店員・火野真理(32歳)は最凶の“他責女”。ある日、真理の勤務する店に、性格が正反対の“自責女”倉田葵(30歳)が現れて…。ここまでくれば清々しい!? なんでもかんでも他人のせいにする“他責女”あるあるコメディ!!