大今良時/不滅のあなたへ


不滅のあなたへ(1) (週刊少年マガジンコミックス)

■非常に壮大な話で「火の鳥 」のような作品。 しかしこの神のような視点に、どうしても引っかかってしまう。

ありとあらゆるものの姿を写し取り変化することができる ・・・なんかポケモンでいうメタモンのようだが、はじめは「球」 であったそれが話の主役である。冒頭では

私は”それ”をこの地に投げ入れ観察することにした
とあり、この「私」が誰かは説明されない。そして その球はオオカミの形となり、北極圏なのか、集落で一人だけ 残り暮らしている少年の元に現れる。少年は、 家畜として飼っていたオオカミが久々に戻ってきたものとして歓迎するのだった。


極限の暮らしにある人物の側に、その球の変化したモノは現れる。 そして刺激を受けると、その相手の姿を獲得することになる、らしい。


ちまちました話に見えるが、描く内容は壮大である。ただ、なぜちまちまと 見えるかといえば、制限された世界が示されて、その枠内での行動を エピソードごとの主人公が迫られているからである。


続く話は少女が生贄に供されるエピソード。ただしこの話は プロローグのそれとは違い、決まった枠ではとどまらずオーバーランしていき、 息苦しい展開が続いたため、 そこまで読んで少々ホッとした。


ところでこの話は、手塚治虫の「火の鳥 」を彷彿とさせる。 そう思った場合、さて、この作品で何か新しいことが提示されているだろうか? という問いが浮かぶ。一巻の時点では、特にない。 仕掛けとしては、変化する存在である球がトリックスターとして 作中に投げ込まれている点が新味であり、これが続刊では動くことで 話が転がっていくのだろう。 無敵で無限であるこの存在を投入したことは、果たして是と出るのか否と出るのか。 その上で、これを投げこんだ神のような存在が作中にも存在する。 どういう役割を果たさせるつもりなのか。まぁ神とは作者であるというオチも ないではないが。


しかし、こうしたチャレンジングな作品を送り出せる環境があるのは素晴らしい。 作者もだが版元と編集に賛辞を贈りたい。


【データ】
大今良時 (おおいまよしとき)
不滅のあなたへ
【発行元/発売元】講談社 (2017/1/17) 【レーベル】少年マガジンコミックス 【発行日】2017(平成29)年1月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→不滅のあなたへ(1) (週刊少年マガジンコミックス)
何者かによって“球”がこの地上に投げ入れられた。その球体は、情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられる。死さえも超越するその謎の存在はある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……刺激に満ちたこの世界を彷徨う永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。


■当サイトの著者他作品レビュー
大今良時/聲の形

■当サイトの月間オススメはこちらから


search this site.

mobile

qrcode

selected entries

categories

profile

others

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM