【オススメ】 有永イネ/鬼さん、どちら


鬼さん、どちら (ビッグコミックス)

■【オススメ】差別のことを語るのは、たいてい、難しい。

差別のことを語っている人はたいてい屑である、ということを書いているわけではないのだけれど、 まぁ言っているのはそういうことである。型にはめて、考えずに済むなら簡単だ。でも 社会や人生は、そういうものではない。


鬼がいる世界の話。鬼、といっても 先天性頭部突起症というもので、ツノが出ているだけである。 いや、体質は虚弱らしい。とはいえ外見はツノ以外は変わらない。 整形手術で除去することも珍しくはない。


冒頭に出てくるのは恵まれた家庭の子であるらしい少女。 気が良い彼女はその性格ゆえ人気ものであるが、 しかしキャラクターゆえにこういう人と規定されて遠巻きにされている面も実はある。 一方、クラスには突起症の女子が。こちらは確実に遠巻きにされている。 周囲は、型にはまった枠のなかで考えるなか、 たまたま接点をもったふたりは、まっさらな状態でやりとりする二人。


差別というか区別され無理に優遇され、それが心苦しく、自分の底上げされない実力、 本当の自分はなんなのだ、と思い悩みこんでしまう「鬼」の話は、「ないた あかおに」的な 説話の延長線上にある。世の中の人権団体だの心優しい人の殆どは、 こうした思いをあまり鑑みず自分自身の善悪の判断、やりたいことだけで行動している。 そういう自己中心的な自分勝手な人物でなければそういうことは出来ないからだ。 それは本当に正しいことであれば素晴らしいのだけれど、残念ながら世の中に本当に正しいことなんてものはない。 なのでたいていの、いやすべての活動家は、存在として間違いなのである。


ところでこの話は、進むにつれて鬼をとりまく話にシフトしていくが、 冒頭のエピソードはやや視点が違う。 恵まれていたら泣き言を言ってはいけない、苦しいと言ってはいけないと思っていた、 という少女の思いのほうが、現代日本のリアルに近いだろう。 こうした抑圧は往々にしてある。一方でそれを声高に叫ばれても外野としてはお前何言ってるんだという 印象になることは否めない。


解決は簡単で、そもそもがみな他人に興味を持ちすぎなのである。自分のことが大事。 自分の周りのひとだけが大事。他人はどうでもいい。そういう発想になればよい。 コミュニティなんて意識が薄くなってきている現代は、過去の人々が住みづらいと思った社会を 変えてきてくれたおかげである。昔に戻ろう、というのは妄言であり、何事も過去に戻ることなどできないのだから、 昔は良かった、という発言をする人物は怠惰であり社会を停滞させ後退させ崩壊させる癌細胞である。 生き物は自分のこと、家族のことで精一杯である。それでいいのだ。それが正しい。 他人のことを気にしだしたら、それは、自分に熱意が向けられなくなった証拠である。


という微妙な題材を選びつつ、あくまで鬼、突起症の話なのでフィクションに昇華している。 いや、フィクション、漫画が描くべきは、現実の話ではなく、非現実の話であるべきなので、 これは実に正しい。一話目の完成度が特に高いが、最終話のまとめかたもなかなかに良い。 最後まで読むと、ほっこりしつつ、ほほ笑みながら、涙がにじむ。 そんな佳作である。


【データ】
有永イネ (ありながいね)
鬼さん、どちら
【初出情報】月刊IKKI(2014年) 【発行元/発売元】小学館 【レーベル】ビッグコミックス ヒバナ 【発行日】2015(平成27)年11月17日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
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三千人にひとり「鬼」のいる日常。「鬼」には「先天性頭部突起症」という名前がつけられ、節分の風習もなくなった。周囲に気をつかわれながら生きている鬼の女子高生・崎、崎のことが気にかかる同級生・ゆいこ、「突起症の天才少年」という過去を引きずるチェロ弾き・真央、かつて「鬼」だったがツノを切除した奥富、「鬼」を嫌悪する崎の担任・端場――――「鬼」という存在が浮き彫りにする人間の弱さと強さの物語、5篇を収録。

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