【オススメ】 萩尾望都/11人いる!

11人いる! (小学館文庫).jpg
11人いる! (小学館文庫)

■【オススメ】物語の大筋はミステリだが、 今読んでも楽しめるのはSFであるがゆえだろう。

旧作を紹介する一巻読破クラシックスのコーナー、 当面はまもなく発表となるであろう小学館漫画賞の 過去の受賞作から電子書籍で読める作品を取り上げていく。 まずは1975年を対象とした第21回受賞作、萩尾望都「11人いる!」 言わずとしれたSFの名作である。


舞台は宇宙大学の入学試験。 最終試験として十名一組で宇宙船に送り込まれ、 そこで53日間、一人も脱落せずに過ごせれば合格、 という条件のなか共同生活が始まるのだが、 しかし、人数を数えてみると、ひとり多い 11人が船内にいるのだった。


大筋は題名どおりのミステリ。 とはいえ、それは、なるほど、というオチがつく。 シリアスでタイトな事件事故が起こることを考えると その仕掛けはどうか、と思わなくもないが、 宇宙ではどのような事態も起こりうるのだ、 という背景もあってのことなので、 ご都合主義な設定とは言えないだろう。


一方で本作が佳作傑作と言われるのは、 SFの要素ゆえだろう。 主人公の設定を踏まえた背景部分もあるが、 それ以上に作品が劣化しない理由は、 この作品の種族の多様性にある。 様々な人種がおり、そのダイバーシティは今でも新鮮。 皆がちょっとしたことで疑心暗鬼にかられることも、 一方で頑固なまでに信念をもって他人を信じるものがいることも、 ともにリアリティがある。 加えて、フロルという人物の設定は、SFでなければ成立しない。


このフロルが、感情に素直で、表裏なく発言するキャラクターである ことが、作品の肝となっている。そういうちょっとバカな、 空気を読めないがうまい具合に引っ掻き回す人物を、 口は悪いが美形で華がある設定としたところが作品の妙味。 特にこの人物の設計が、よりシリアスな続編でトリックスターとして 生きてくる。


文庫版を電子化した本作にはその続編も収録されている。 戦争をしたくない王だが、結局、開戦目前まで事態が追いやられる、 という話で主人公たちはそこに巻き込まれる形。 戦争を回避したい、と思うだけではダメだ、という苦い話でもある。 戦争をしたらなんとかなるのではないか、それこそが突破口だ、 という思いには、手段としての戦争を否定するだけではなくて、 戦争する目的と同じことを別の平和的な手段で到達できるのだ、 と示さないと意味がないわけだ。


そんなシリアスな話を主人公たち、というか、 フロルの脳天気さが救っている。 そして巻末の、更に脳天気さをパワーアップした ショートショートですっかり口直しをして一巻終了。 一冊の構成としてよく出来たものになっている。 自分が昔読んだときは正編と続編で別々の冊だったような気がしたが・・・ 70年代刊行の本はそういう形態だったので記憶は正しいのか。 本電子書籍は1994年の全一巻化された版が元になっている。


【データ】
萩尾望都 (はぎおもと)
11人いる!<新編集版>
【発行元/発売元】小学館 【レーベル】小学館文庫 【発行日】1994年12月10日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
amazon→11人いる! (小学館文庫)

宇宙大学受験会場、最終テストは外部との接触を絶たれた宇宙船白号で53日間生きのびること。1チームは10人。だが、宇宙船には11人いた! さまざまな星系からそれぞれの文化を背負ってやってきた受験生をあいつぐトラブルが襲う。疑心暗鬼のなかでの反目と友情。11人は果たして合格できるのか? 萩尾望都のSF代表作。



search this site.

mobile

qrcode

selected entries

categories

profile

others

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM