田中雄一作品集 まちあわせ
■【オススメ】元旦早々、暗いものを紹介するのも何ですが・・・。
短編4編収録の作品集。すべてSF。 内容としては面白いが紙書籍だと1500円、 そういうタイプの作品である。 つまり、癖があり、いかにもマンガ好き(だけ)に受けそうな、 そういう漫画である。電子書籍だと864円。 ぐっと手頃な額になった、ように見える。
作品はすべて、どちらかというと、暗い。世紀末の作品である。 1編めは、突然変異した虫が襲ってくる話。 人喰い虫だが、主人公は、絶滅危惧種である虫を保護したい、 という思想のほうが強い。そんな変な設定で描く話なので、 読み手としては違和感はある。最終的には、覚悟が必要、 早めの決断が必要、といった話に。後味はよろしくない。
2編めは、進化した猿が人を襲ってくる話。 ただし、一部の進化した異人類は、人類を遥かに超越していた。 喧嘩は同じレベルでないと起こらない。戦争も同じ、ということか。 でも侵略は別か。話としては、親子の話。
3編めは、表題作で、これは異生物の子と恋した彼氏の話。 ふたりの子が出来るまでの壮大は話。普通の人間の時空軸を 越えるところは「火の鳥」っぽい。
4編めは、巨大生物が溢れる時代、 巨獣に守られながら巣で暮らす者たちの話。 巨獣になれる資質の持つ者がなる、というか生贄のように させられる。でも巣を護る巨獣は、性質が温厚ということを 重視したもので、必ずしも強いものではなかった。 巨獣の不幸という側面が大きいか。
それぞれ読み応えはある話だが、読みづらいし、 SF的な設定自体は新奇というわけではない。 もちろんオリジナリティあるSFなんてものは 今どき生まれようもないので、そんな点から批評するのは ナンセンスである。本作の売りとすると、 うーん、異形、というところなのだろうか。 諸星大二郎あたりに近いので、氏の作品のテイストが 好きな筈なのに未読という読者には薦められるかもしれない。
【データ】
田中雄一
(たなかゆういち)
田中雄一作品集 まちあわせ
【発行元/発売元】講談社
【発行日】2014(平成26)年7月1日発行
※電子版で購入
■評価→
B(佳作)
■購入:
amazon→田中雄一作品集 まちあわせ
虫、類人猿、巨獣…異生物と人間が織り成す、生存のドラマ! 雑誌発表時に大反響を呼んだインパクト抜群の傑作SF短編群、ついに単行本化!! 新種の昆虫の人間界への侵略『害虫駆除局』、人間と同じように進化してきた類人猿との共存『プリマーテス』、怪獣が闊歩する超未来『箱庭の巨獣』…。そして表題作『まちあわせ』は、予想不可能な壮大なイメージと感動へと導く究極のラブストーリー! 期待の新人作家、初の作品集。