相原コージ/Z〜ゼット〜

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Z〜ゼット〜 1

■ゾンビものとしてユニークな設定もある半面、 ネタを寝かせすぎていまとなっては古臭い部分もある。

題名を「Z」と書いて「ゼット」と読ませる、いまとなってはやや癖のある表記の作品( 英語ならゼッドなのでオランダ語読み)、ゾンビのことを表している。


ゾンビ話は、ホラーやサスペンス一辺倒だったのが、 いまはロードムービー的な傑作コメディや、恋愛ものに展開した話題作など、 アイディアあふれる映画が登場しており、マンガでもゾンビと共存したり、 捕獲する仕事を描く作品が出ている。テレビでも某局ではドラマを展開するなど、 割にホットな、つまり、数多の作品がおくり出されるジャンルとなっている。


そんな状況下に出た本作のアイディアは、細かいところではユニークだが、 大きなところでは、むしろ凡百。中盤までは、主役といえる人物が出てこない。 ホラーものは結局、読者が作品世界にのめりこめるかが重要で、 その場合に主役が固定されない話は、当然、マイナス要素となる。


それを覚悟しても描いた主役を固定しない前半部分は、 それであれば世界を丁寧に 描写するのが本来だろう。しかし、本作はそうした作りになっていない。 著者の狙いではあるのだろう、見せ場のあるシークエンスを抜き出して 投げ込んで、最初から決め球を見せまくる。しかし、それが、 取り扱っているひとがあまりいない題材であればともかく、 いまや溢れているゾンビ話、となると、めくらましの変化球を投げ込んでいるだけにしか見えてこない。 これは、ゾンビ話を今の時代まで寝かせすぎたことによる 誤算だろう。


ゾンビ話であまり出てこない下半身絡みのエロネタを豊富に投下している のは面白いが、一方で、それは著者の絵柄でやるものだろうか? という疑問もある。勿論、艶めかしくないから良いのだ、 という逆説もあるだろう。シモネタを含めたブラックコメディとして ゾンビものを描く点では正解なのだろうが、エロいゾンビもの、という方向性もあっただろうことを考えると、勿体ない。


どうも世界は崩壊しきっておらず、 そこが世のゾンビものとの違いであり、 この世界が続く、という内容の話と違う結末を持ってくるらしき 一巻の終わり方をみると、最終的には、やはり異色な佳作傑作であった、 と評価できる可能性も残るが、それを見てみたいと思うほど 好みかというと、どうだろう・・・。


質の高さを確認するために義務感で 続刊を買って読む、なんてことは、一般の消費者は絶対しないので、 そういう評価やそういう買い方はしたくない、というのが本サイト の立ち位置である。読みこめばいくらでも深く読める作品はあるけれど、 描き手や出版サイドに寄り添って本を読む気はサラサラない。 本ブログで酷評すると、読み方に深みがない、などと批評するひとが いたりして、それは正しいと思うが、こちらとしては、深読みしてあげるほどの 魅力がその作品にはないからそう評しているものなので、そもそも レビューする立ち位置が違う。マンガが金を払って買ったうえで時間も使って読むものである以上、 消費者の立場でレビューするのが本来であるだろうし、完結した一巻本ならともかく、続刊 を更に買わないといけない続きものの作品を深読みして擁護して続刊を薦めるなんてことは、 自分が確実に続刊を買いつづけることを覚悟していない限りは、できない。


【データ】
相原コージ (あいはらこーじ)
Z〜ゼット〜
【発行元/発売元】日本文芸社 【レーベル】NICHIBUN COMICS 【発行日】2013(平成25)年5月10日初版発行 【定価】590円+税
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→Z〜ゼット〜 1

『コージ苑』『サルでも描ける漫画教室』『ムジナ』など、日本ギャグ漫画界の重鎮的存在である相原コージが、満を持して描くゾンビ・パニック・ホラー『Z〜ゼット〜』。発生初期、発生中期、発生後期の3段階でストーリーは展開されるが、その構成は毎回バラバラのオムニバス。また、ゾンビ化も人間だけには留まらないし、細分化された肉体さえもゾンビとして襲ってくるという、まさに手の付けようのない状態。一筋縄ではいかないゾンビ・ホラーの傑作誕生!!



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