ウォルター・アイザックソン、ヤマザキマリ/スティーブ・ジョブズ

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スティーブ・ジョブズ(1)

■原作を上手にトレースして映画のように見せる佳作。

なんで紹介していなかったかというと、伝記の原作を既に読んでいて、 面白かったがジョブズの鼻につく加減を二度読むのはしんどかったためである。 とはいえ実写映画が評判の悪かったことを考えると、誰もが知っている 対象を描くには漫画、アニメという手法のほうが寧ろ向いているのではないか、 と思い直して我慢して読んでみた。


一巻はまだ若きジョブズの話であり、エキセントリックな若者、 という域を出ない。ただの変人である。自伝のフレームに沿って展開されるので、 冒頭ではジョブズが原作者に伝記執筆を持ちかけるところから始まり、 過去のジョブズのエピソードを描くときにもちょいちょい、 現時点のジョブズの回顧が挟まれる。


個人的には、時間軸をいちいち現実に引き戻すシークエンスを挿入する 作りは好きではない。進行する時間という軸が絶対的に存在する映像や演劇の 場合に比べれば小説や漫画の場合はさほどではないとはいえ、没入していた時間から 引き離す仕掛けは、リニアのもの、直線的に体験させるエンタテインメントでは、 余計なものである。


伝記の場合、描いた過去の事柄が今現在、当人たちの口から 語られたものである、という意味合いもあっていちいち引き戻すのだろうから、 フィクションに足を踏み入れすぎないようにするためのことなのだろうが、 特に漫画でそういうカットが挿入されると、それは要らない部分に見えてくる。 漫画が文字だけの文学よりも絵がある分だけフィクションに 余計に足を踏み入れたメディアであるからだろう。


原作の伝記を未読であるなら面白く読めると思う。 ただしジョブズののファンが読んで面白いものなのかなぁ、 読んだら嫌いになるだけだと思うんだけど、というのは 伝記自体への感想であり、本作でもそれは変わらない。 →原作はこちら「スティーブ・ジョブズ I 」「スティーブ・ジョブズ II 」 なお漫画版は2巻が4月11日に発売予定→「スティーブ・ジョブズ(2) 」予約受付中


【データ】
原作=ウォルター・アイザックソン、漫画=ヤマザキマリ
スティーブ・ジョブズ
【初出情報】(Kiss) 【発行元/発売元】講談社 【発行日】2013年7月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
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ウォルター・アイザックソンが著した世界的なベストセラー『スティーブ・ジョブズ』を、『テルマエ・ロマエ』で一躍脚光を浴びたヤマザキマリ氏が漫画化!! 第1話の試し読みは1週間で5万人以上が読み、第1話の掲載『Kiss』発売日には英・ガーディアン紙も取り上げた、超話題作登場!!

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