【オススメ】 端野洋子/はじまりのはる

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はじまりのはる(1) (アフタヌーンKC)

■【オススメ】震災というか原発事故のせいで構造が変わってしまった作品。

後の時代に、資料的な面が強調されそうな作品である。「ミルクボーイ」という作品では、酪農を手伝うことになる工業科の高校生の話で、これはこれで素直な青春ものだった。それを、震災後に、同じ舞台同じ人物を使いつつ、それでは描きたい話にならないということで、主人公の設定を工業高校ではなく酪農家の息子と同じ農業高校の生徒に設定しなおしたのが続編である表題作である。


表題作を続編として作った点は、正直なところ、評価しにくい。なぜ同じ人物でなければならなかったのか。しかしこの、リメイクというかリミックスという手法は、漫画では、やっている人は多くなく、その試みは、ありかなしかといえば、ありだとは思う。そして、震災前の状況ならこういう話になったものが、震災後、というか原発事故による放射能被害後だとこうなる、と見せることには、非常に意味がある、とも思う。ただ、漫画作品自体の質よりも、テクニカルな部分や資料的な価値というところに目が行きそうで、そうした文脈で読まれるほかない話に仕上がってしまった点は、果たしてどうなのかなと考えると、評価しにくい。


一方で、放射能の問題にきちんと向き合い、その上でフィクションとして描いた本作は、エッセイやルポとして取り上げた作品よりも、性根が座っている。ノンフィクションよりもフィクションのほうが、描き手の姿勢としてはより真摯である。ノンフィクションの場合、どうしても、描写する自分という存在が見え隠れする。客観的に描こうとしても、自分が邪魔をする。知識のない人の感覚的な発言を客観視して批判するには、フィクションで描くほうが距離感も保ちやすい。一方的な批判でなく、多面的な見方も用意できるのは、実はフィクションのほうである。作中でも触れられるが、メディアによる報道が客観性を維持できず、知識のなさ、考える頭のなさを露呈してしまったのは、フィクションでないがゆえの限界に発しているのではないか。


とはいえ、放射能や風評被害、無知の罪、というキーワードを使った批評になりがちな作品に仕上がってしまったのは、漫画として幸か不幸かといえば不幸なことであり、作品の描く方向をそこに舵取りしてしまったことは、残念でもある。仕方ないことではあり、覚悟の上の作品なのだろうが、そういう話でないものを読みたかった、というのが本心ではある。


【データ】
端野洋子 (はのようこ)
はじまりのはる
【初出情報】アフタヌーン 2010年5月号、2011年12月号、2012年9月号 【発行元/発売元】講談社 【レーベル】アフタヌーンKC-897 【発行日】2013(平成25)年7月23日第1刷発行 【定価】600円+税
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★
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【公式サイト】
3.11、福島。震災前、農業科に通い未来を模索していた少年たちを描いた「ミルクボーイ」、その続編「はじまりのはる」で震災に翻弄される彼らを描き、大きな話題を呼んだ表題作。 震災の被害は比較的軽微とされる福島県南部ですら生活が一変した高校生たちそれぞれにスポットを当て、彼らが、そのとき、その後をどう生きるのか、正面から描く話題作。
はじまりのはる 端野洋子 - アフタヌーン公式サイト - モアイ


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