【オススメ】 押見修造/志乃ちゃんは自分の名前が言えない

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志乃ちゃんは自分の名前が言えない

■【オススメ】題名通り、衒いのないシンプルな青春もの。 なぜ衒いがないのかは、あとがきを読んで納得。

この題名からどんな中身を想像すべきか、いろいろ考えたが、開けて読んでみると、全くもってそのまんまの内容であった。入学式前日、予習をする主人公。それは、自己紹介の練習。大丈夫、大丈夫・・・と自分に言い聞かせるも、結局、言葉が出てこない。


母音から始まる言葉が特にだめで、大島、という自分の苗字が苦手。でも名前なので言い換えることはできない。余計に緊張して、さらに言葉が詰まる。最初はふざけているのかと思われ、緊張しているからリラックスしようだの、友達つくって頑張ろう、だのというアドバイスをされたりもする。そんな彼女がクラスの子と仲良くなる。彼女は、しゃべれないなら紙に書けば良いという。彼女はギターを弾けるが、歌は音痴。一方、ヒロインは歌う分にはつっかえない。なので、彼女はふたりでデュオを組もう、と主人公を誘うのだった。


こんなストレートで等身大な青春物語。ヒロインは、自分の抱えているトラブルに戸惑い、立ちむかい、しかし、壁にぶち当たる。主人公が自分に立ち向かい、乗り越える方法は、綺麗な成功によってではない。不器用だったが、最後の最後で逃げなかったことで、彼女は道を開いた。友達の友情に応えた。


結局、友達がいたから、ということではある。でも、前に進めたのは、自分自身が前向きになれたから、だろう。ところで、普通の話なら、綺麗にまとめるために、最終話で名乗る名前は既出の苗字にしそうなものだが、そうではなかった。これは、深読みしてみれば、彼女の世界が広がったことを示しているのかもしれない。


巻末のあとがきを読むと著者がどうしてこの話を描いたのかがわかる。「とても個人的でありながら、誰にでも当てはまる物語になればいいな」という思いは、確かに結実している。


【データ】
押見修造 (おしみしゅうぞう)
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
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■著者の作品@amazon→ 押見修造

"普通になれなくて ごめんなさい"
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"自分の名前が言えない"大島志乃。 そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。 ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まるーー。 いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。 さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?
志乃ちゃんは自分の名前が言えない - 太田出版
【初出情報】太田出版WEB連載空間「ぽこぽこ」2011年12月〜2012年10月 【発行元/発売元】太田出版 【レーベル】− 【発行日】2013(平成25)年1月6日初版第1刷発行 【定価】660円+税
■評価→A(絶品)
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