「迷走王ボーダー」再読

ボーダー vol.1―迷走王 (双葉文庫 た 33-1 名作シリーズ) [文庫].jpg 迷走王ボーダー ・「ネオ・ボーダー 」1巻を読んだが、さて、続編というけれど、あれ?どんな話だったっけっか?ということで前作を探してみた。が、「 ハード&ルーズ 」(狩撫麻礼+かわぐちかいじ)は出てきたんだけど、ということで新刊を探してみた。→ 迷走王ボーダー 文庫版全8巻 が即納。旧作きちんと売られているのは気持ち良い。新作を続編として売るなら、こうでなくっちゃ。

・ボーダー、ということであちら側とこちら側の世界に線がありつつ、迷走王というだけあり、その境界線をあっちへこっちへ。ニューミュージックをこけにしレゲエの精神を持ち上げブルーハーツを大フィーチャーするパンクな話、なのだが、現代社会に活を入れつつ、主人公はふらふらと。めちゃくちゃなようだが、嫌なものは嫌、という明確な線引があり、そこは譲れない。とはいえ最後は落ち着くところに落ち着く。壮大なモラトリアムであり、かつモラトリアムなまま生きていく。いや、自分のままに生きようとして、時代がそれに近寄ってきたというべきか。

・主人公・蜂須賀は破天荒な人物で、過去を隠す割には何があったというわけでもなく、急に自分探しにでかけて、本当に何かを捕まえて、それを小説にし結構売れて、しかもいまでも書店に在庫しているというロングセラーの類、でもそこから逃げ出して、その旅で出会った相手の家に押しかけ、さすがにずっと世話になるのは悪いという程度のプライドはあるので、同じ安い下宿のさらに最安、家賃3千円の部屋、元共同便所だったというところを借り受け住んでいるという。女にもてたいが世間とはずれていて、しかしそこに惚れる女もたびたびいる。酒に目がなく、喧嘩に強い。が短期ですぐ手に出るタイプ、加えて心がそのまま声に出て、取り繕って生きるような人間ではない。

・真面目な木村はともかくとして久保田の過去もよくわからないが、それなりに説明されてはいる。この二人が蜂須賀と共にするのは、まぁ、蜂須賀にそれだけの魅力があるということだろうか。・・・そういう話でもない気がするが。そしてこの手の話はボーダーのこちら側、底辺の話に終始しがちなのだが、過去の履歴にもあるように迷走する男なので、反対側に飛び出しもする。それも桁違い、大金を手に持ち、ギャンブルで当てまくる。レゲエのコンサートという極端な話もなり、その後はレゲエのおじさん−いや、髪は抜けてしまうので単なるルンペンなのだが、そこまで話を飛ばしてしまう。振れ幅が大きい人物だが、∞も0も同じだ、というのが主人公の思いである。となればボーダー上でやじろべえのように生きていくのが最善。平均台の上を走るように、あちら側におりたリスクのない暮らしを彼は避ける。

・そんな話で、面白いんだが、パンキッシュというわけではなく、何かをぶっ壊すわけでもない。というところで、狩撫麻礼とは何も関係がないのだが、思い出した作品がある。「BE FREE 」、いまや悪評しか聞かない江川達也の初期の作品である。この作品はすごかった。学校教師として出色異色な人物が生徒を巻き込んで行く話。学校をブルドーザで破壊するところは学生が読めばすっとする超パンク。ただし、面白い物語なのはそこまで。このあとは話が崩壊し、今の江川達也を想像できるぐだぐだかげん。江口寿史か江川達也か、という崩れ方で、確かにぶっ壊れているのだが、それをギャグに転化できていれば先ちゃんのようになれたのだろうなぁ。色々抱えているのだろうが、それをうまく捌く方法がなかったのは、「BE FREE」後期のぐだぐだが許されてしまったことに原因があるのだろう。そういう点も含めてパンキッシュな一作なのだけれど、これはさすがに新刊はなさそう。中古で全巻セットが投げ売りされているようなので、未読の方はぜひ。



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