【オススメ】 売野機子/ロンリープラネット

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ロンリープラネット (KCデラックス)

■【オススメ】昨年話題になった作品。短篇集ではなく 連作の一巻読み切り。確かに魅力がある。

現在刊行は3冊、だが目敏い漫画好きには既に評価の高い著者、 売野機子 氏の作品は、確かに評価されるだけの内容である。


著名な占い師だが顔出ししていない姉、 その姉が結婚ということで海外に飛び立ち、 家を借りることにした弟。彼は、自身は顔は良いがそれだけで、 期待されるような中身がないことを恐れ、しかし 相手の思いに逆らいたくなく生きてきた。 そして今回、誤解から、姉と誤解され、 開店準備を進めていたスペースで占いをするはめになる。


一人で生きるとき、哀しいときも、 救いはある。そして、一人でいたくないと思った時、 繋がる相手は現れる。自分の形は自分で決める。 もちろん思い通りになるとは限らず、うまく行かないこともあるだろう、 しかし、いずれはなるようになる。ということで、読むものを苛立たせず 優しい気持ちにさせ勇気づけてくれる作品である。


ただ、物語の進行上、捨てキャラが多い。物語世界の中で、通りすぎていくだけのキャラクターというのは正直どうだろうと思いもするが、一方で人生においてはそうした、ちょっとだけ関わりそしてある役割だけを担って遠ざかり消えていく人物というのは多い。そう考えると、主人公の物語であるこのお話で、他の登場人物は少しずつしか関わらないこと、最終話の流れが唐突であることなど、気にするべきではないのかもしれない。なお、状況の設定はきっちりしており、なぜその場所でなぜ店を出そうとしたのか、については理由が明示される。


同時収録の短編は70年代あたりのマーガレット、りぼん系で掲載されていそうな内容と絵で、この短編を読めば昔ながらの少女漫画好きはそれは著者に注目するだろうなぁと思う代物。ちょっと、いや、かなりユニークだが結果ハッピーな物語、という構成は表題作と同じ。


あとがき読んで思うのは、競馬と酒をテーマに少女漫画描いたらどんなのになるなかぁ、と。どっちも売上厳しい業界で、とはいえここでひと頑張りしたいと思っているだろうから、コラボレーションもできそうだが。 いや、一番厳しいのは出版だったりするのか?


評価:B
評価は、A:傑作、B:佳作、C:無印、D:薦めない

【データ】
売野機子 (うりのきこ)
ロンリープラネット
ロンリープラネット (KCデラックス) (amazon)/ ロンリープラネット KCDX (bk1) 】
僕のタロットカードに僕の未来は映らないけれど、一人ぼっちの貴方の未来なら――。 漫画読みに愛される売野機子の新作!

取り得は見た目だけで、肝心の中身をなにも持たないことにずっと悩んできた常盤一郎。ある日姉で超人気占い師であるトキワ未来に間違われてしまったことから、占いを求めて連日押し寄せる女性客の相手をしなければいけなくなり……? 大きな秘密を抱える3人家族を描いた「その子ください」を同時収録。

売野機子が描くのは、「偽占い師」と「マル秘家族」。

ロンリープラネット 売野機子 講談社
【初出情報】BE・LOVE 2011年16号、18号〜21号、「その子ください」2010年20号 【発行元/発売元】講談社 【レーベル】KCDX-3157 【発行日】2011(平成23)年11月30日第1刷発行 【定価】600円+税



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