久慈光久/狼の口 ヴォルフスムント

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
■ 中世ヨーロッパ、非情な関所を 舞台に綴るハードボイルドな物語。 読ませるが、しかし、 著者が何をいわんとして描いているのかが 今ひとつわからない。
14世紀アルプス。オーストリアが制圧するなか 自治権を奪われつつあった森林同盟三邦。 シュヴァイツで反乱がおこり、首謀者は処刑されるが 娘は難を逃れる。しかし彼女が逃げる先には、 何人たりとも通さぬ非情な番人が 守る関所があった。
不審なものを通さぬ鉄壁の関所を中心とした話。読ませるのは確か。 しかし、後味がよろしくない。 題材からしてこれは、スイス独立から 連邦樹立への話であることはわかる。 だが、読み手が戸惑うのは、 描写の視点がどこにあるのかよくわからぬことである。 狼の口を守る番人の側なのかというとそうでもない。 かといって後のスイス側に組して描くのかというと、 案外そういう感じにもみえない。 ヴィルヘルム・テルまで出てくるのだが、 独立運動側に立った話に見えない。 全編通して出てくる主人公が 関所の番人であるので、 敵であるならその存在を大きく描く必要があるが、 彼としても微妙な立ち位置であることが度々示されており、 その異常性は描かれるものの絶対的な存在という感じではない。
視点の置き方が変なので、 読み手としては落ち着かない。 これがスイス独立に向けての話である、 という予備知識を読者が持っていることを 要求している内容であり、 それがないと、落ち着かない気分のまま、 暗く読み終える作品である。 この後のことを、作品内では 狂言回しのように登場する女性が 口にしはするのだけれど、 彼女中心に物語が回っていくわけでもなく、 またその後の世界の流れについて 一切説明されもしない。 舞台についての理解がない 読み手に対して、 さすがに不親切なつくりで、 その不親切さは、この作品に関しては、 読者を遠ざけてしまうものに思うのだが・・・。
ただし力量は確か。その不親切さゆえに カルト的人気も期待できるし、 解説をつければぐっと読みやすくもなる。 とはいえ、解説などなしで読ませるも のが本物なのではないか。
【データ】
久慈光久 (くじみつひさ)
狼の口 ヴォルフスムント
【 アマゾンで購入 : 狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
【帯】 太陽はすべて沈めてしまえ灯り悉く斃れてしまえ真っ白な山の暗がりのけものの道をとおるのだ 14世紀のアルプス地方。イタリアへと通じるザンクト・ゴットハルト峠には、非情な番人が守る関所があった。何人たりとも通行能わぬその砦を、人々はこう呼んだ。ヴォルフスムント−"狼の口"と。 脅威の大型新人・久慈光久による、波瀾弩級の中世叛乱活劇!!掲載=Fellows!! vol.3、5、7
「抵抗には抑圧を」森林同盟三邦VSハプスブルク家 物語は三邦の一、シュヴァイツから始まる。闘士エルンストは叛乱軍の首謀者であったが、激しい抵抗ののち捕縛され、仲間とともに打ち首と処せられた。 一族皆殺しをせんとするハプスブルク家は娘のリーゼを捜すが、リーゼは庇護者ゲオルグとともに南の関所〜ヴォルフスムント〜へと向かっていた。国外へ脱出すれば身の安全と、ふたりだけの穏やかな生活が待っていた−。
エンターブレイン/角川グループパブリッシング
BEAM COMIX
2010(平成22)年2月26日初版初刷発行
定価=620円+税











