豊田徹也/珈琲時間

珈琲時間 (アフタヌーンKC)
珈琲時間 (アフタヌーンKC)

■ 珈琲を間につなぐ連作短編。

喫茶店に入った音楽家はたまたま隣に座っていた男性に話しかけられる。トーキョーのカフェで出てくるコーヒーは皆おいしい、特にこの店は、という彼はイタリア人、らしいが喋る言葉は日本語である。さらに、ホテルにカードを忘れてしまい小銭ももうない、この店に来ることはもうないだろう、それが心残りだ、せめてもう一杯、という彼に音楽家はおごってあげることにした。すると彼は、通りの向こうで演奏している君をみていた、音は聞こえなかったが素晴らしいタッチは伝わってきた。さらに、実はオーケストラのステージマネージャーをしている、といって著名な指揮者リッカルド・ムーティの名を出し、彼は私の義理の姉の妹の旦那の友人だという。彼が日本の演出家による「マクベス」で来日した際私も同行したのだ、それ以来度々来日しているという彼に、音楽家は言うのだった。「・・・それってリッカルド・フリッツァじゃありませんでした?」


という具合の話を最初に置く連作短編ものである。どんなオチかは読んでもらうとして、その後は別に喫茶店が共通するわけではなく、登場人物も合致するわけでもない話が続く。貫くのはどの話も珈琲が出てくると言う点。ただしその珈琲が話の鍵になるわけでもない。ゆるい繋ぎ方だが、最初の話のふたりや、続く話の探偵などは何度か登場し、最終話がそれらの人物を繋ぐ一篇となっているのは連作短編らしい。しかし途中で挟まれる話が、日常的な話だけでなく、非日常的であったり、ときに非現実的であったりとバリエーションがあるのは、面白いが逆に飛びすぎていてどうなのだろう。短編集として読む分にはこれでよいのだが、表題の連作による一冊だと思うと、最後できっちりまとめにかかる分、その軸に沿って全篇つくるというほうが素直だったのではないかという気もする。とはいえ上手いのは確かである。


【データ】
豊田徹也 (とよたてつや)
珈琲時間 (コーヒーじかん)
【 アマゾンで購入 : 珈琲時間 (アフタヌーンKC) , ビーケーワンで購入 : 珈琲時間 アフタヌーンKC
【帯】 前作「アンダーカレント 」から4年。豊田徹也の新作登場! コーヒーがあるだけで、世界はこんなに美しい。 「コーヒー」をモチーフにした芳醇な短編集。
掲載=アフタヌーン 2008年7月号〜2009年2月号、4月号〜12月号

講談社
アフタヌーンKC
2009(平成21)年12月22日第1刷発行
定価=552円+税



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