【オススメ】伊図透/ミツバチのキス

ミツバチのキス 1 (1) (アクションコミックス)
■ 【オススメ】 すべてが見えてしまう少女の苦悩。
冒頭の絵的にあいまいな描写で、これは何だと思うが、その稚拙な描線は、心的描写であることがわかる。ヒロインは教団で、信者の願いや悩みに対し、その人物に触れることで未来を見るお告げを行っている。彼女には、触れた相手の、すべてが見えるのだった。
この人物を追いかけるのは、官僚。国益のために組織横断的につくられた部署が、スパイがわりに使おうと、彼女の取り込みを考えていた。特に話の中心となり、彼女を追うのは、書類つくりの天才。ほかなら通らないものが彼の書類となれば通るといわれる、完璧な報告書を作る人物。
ヒロインが、教団に、というか他人のプライバシーを覗く自分に嫌気がさし、脱走することで、話が動き出し、両者が接触することになる。
超能力者の孤独と苦悩、という話だが、 筒井康隆の“七瀬”(→ 筒井康隆、清原なつの/家族八景 )ほどの世捨て感や息の潜め方あるいは 戦いの構図にはなく、 超能力者のヒロインの隣に 非超能力者を配して会話させる構図は たとえば“ おもいでエマノン ” のような雰囲気に近い。絵柄も似ているといえば似ているが、 そういう薦め方をすると鶴田謙二ファンにはぜんぜん違うじゃないか! と怒られそうなのでやめておく。
ヒロインが見ているだけで読者には伝えられないことなど、読み手にすべての情報を絵として与えているわけではないつくりは面白い。ただ、その分、彼女に暴露された人がどうしてそこまで精神的に追い詰められてしまうのか、に関しては、そっけなさ過ぎる面がある。彼女が相手の心理を探る際の描写はチープな感も。
さらに気になる点。また、P.118の描写を思うとP.173における「奥さんは」という説明の文章はオカシイのではないかという気がするが、でも「ルーフから」「後ろ向きに」ではないのでP.118の絵は関係ないのか。しかしそうなると、P.173にあるような事情なのになんでP.174で「慰謝料」という言葉が出てくるのか。まぁ勝手に払っているということか。でもじゃあなんでそんな事情なのに「奥さんが会うのを許可してくれない」なんて話になるのか・・・ちょっとうまく想像できないんですが。気にしなくても大勢に影響はないのだけれど、結構肝心な部分ではあり、なので読んでしまうわけで、そうするとつじつまがあっていない感じがしてもやっとしてしまう。まぁ映像ではなく本なので、自分のペースで読める分、そのモヤモヤのせいでその後の話の印象が薄れるということはないのだけれど。
そのような、引っかかる点はあるのだが、全体をすっきりまとめ、情緒ある 話としながら、安易な泣きには持っていっていないセンスを評価。 話は一応の完結をみせており、一巻だけでも楽しめる。240ページに及ぶ単行本は読み応えあり。このあと一体どう続くのか、という興味を抱きつつ、2巻を待ちたい。
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【データ】
伊図透 (いずとおる)
ミツバチのキス
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【帯】 漫画アクション新人賞出身作家衝撃の第一作 触れた人のことが「わかってしまう」少女・草野慧は望んで得たわけでもないその能力が宗教団体の拡大路線のために利用されていることを嫌い逃走、地方に潜伏していた。だが、そこには彼女を諜報活動の切り札として抱え込もうと画策する国家機関の影が・・・・・・。追い詰められる慧。自らを傷つける自らの力。彼女は未来をどう切り開くのか? 触れた人の事が「わかってしまう」少女 世界一完璧な書類を作る官僚 「見える」ってとても「残酷」。掲載=漫画アクション 2008年8月5日号〜2009年1月6日号 「に掲載された同名作品を大幅に加筆・修正」
双葉社
ACTION COMICS
2009(平成21)年1月28日第1刷発行
定価=600円+税


















