ふみふみこ/愛と呪い


愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)

■宗教を描く話。 アプローチの仕方が、これしかなかったのかなぁ、 と思ってしまう。巻末に浅野いにお氏との対談があり、 浅野氏の作品に感じる過剰な芸術性を 本作にも覚えた。

宗教を信仰する家。父親は娘の寝間に潜り込み 性的な悪戯をしている。お風呂も一緒に入る。 その娘が主人公。 将来の夢も、好きな人も、ピンとこないが 周囲に合わせて空気を伺う。


生まれてきたときから家に信仰するものがあり、 それにあわせ暮らし生きてきた少女の話。 難しい題材を描くわけだが、 そのアプローチの仕方がよくわからなかった。


ぼやっとした絵で描くのは、 少女の物心がはっきりついていないからか、 あるいはぼやかして描きたいことだからか。 しかしこうした題材の話に余計な要素を放り込むのは、 手かずの多さというよりも疎外要素に見えてしまう。


視点も、微妙に神の視点で少女のことを描写する。 その距離の置き方は、物語を読者から乖離させる。 現実にあった神戸の震災や頭部切断事件を 交えて描くところも、ふわっと描く話に 突如リアリティが入り込む気持ちの悪さを覚える。 さらに時間が飛び、オトナになった主人公 が突如登場、これが神の視点で描かれていた理由か、 と思いつつ、また少女時代に時制が戻っていくのも、 この手の描き方が嫌いな者には癇に障る。


話としては、 学校で違和感を覚える彼女がもやもやして いたところ、信仰に反抗的な少女を見つけ、 彼女に同調し乗っかることで思いを晴らそうとしていたのを ハシゴを外される、という流れが、 可愛そうで不憫でもあり、いや他人に人生委ねている 時点で信仰と同じじゃないかと思いつつ、 この主人公に託して物語を綴る時点で、 枠のなかでちまちまやるだけの話に終始するのだろうなぁ と思ってしまう。その手の暗くカタルシスのなさそうな 話に付き合う気力は正直なところない。


誰に向かって描いている話なのかが読んでいてよくわからなかった。 ちなみに巻末の対談は読んでいないのでそこで触れているなら申し訳ないが。


【データ】
ふみふみこ
愛と呪い
【発行元/発売元】新潮社 【レーベル】新潮社 (2018/6/9) 【発行日】2018(平成30)年6月9日発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★
■購入:
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物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。


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