ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)
■【オススメ】熱い美術もの。 スポーツ漫画のノウハウで他ジャンルを描く のは一つの正解。
遊び歩いて飲んだりタバコを吸ったりするような
金髪のDQN高校生、だが彼は成績優秀、
人懐っこく誰かを否定したりすることもしない。
ただし、ひとりだけ、幼馴染の(注記:2巻を読むと高校で知り合った様子)
同級生の
美少女・・・ならぬ女装っ子だけとは
口喧嘩する仲だった。
といっても別にLGBT話が始まるわけではない。 この女装っ子が美術部で、選択授業をとっていたことから 課題が頭にひっかかる。
「俺にとってテストの点を増やすのも 人付き合いを円滑にするのも/ノルマをクリアする 楽しさに近い」ただ、
「クリアする為のコストは人より多くかけている/ そしてそれが結果になっているだけのことなのに/ みんなが俺を褒めるたび虚しくなる/この手ごたえの なさはなんなんだ」そして、日本代表が勝って盛り上がるが、 その感動は誰のものか。他人の努力で酒を飲むのか。
「これは俺の感動じゃない」
では自分の感動はなにか。ということで、 自分の思いを美術の課題に乗せて表現することにする。
「好きなものを好きっていうのって/怖いんだな・・・」でもそれが伝わったとき、彼はとても嬉しかった。 美術は文字じゃない言語である。その表現の広さに、 彼は自分がやりたいことがここにあるのではないかと思ったのだった。
この作品は、手ごたえのなかった努力家の天才に、 歯ごたえのある自分向きの素材が見つかる話。 彼を掻き立てる先輩がいて、それ以上に、 うまく意欲をかりたてる先生がいる。 メンターがいないと何事も始まらないので、 環境は大事。 先生の
「頑張れない子は/好きなことがない子でしたよ」という言葉は強烈。
「好きなことに人生の一番大きなウエイトを 置くのって普通のことじゃないでしょうか?」
家計の状況から私立大学は無理、そんな主人公が 美大を目指す、つまりは芸大一択。ある種の無理ゲー。 でも頭がよく成績に結びつけるだけのセンスがあり、 つまり勉強や上達する術を知っている。 要するに、才能あるもののスポーツ漫画のような 構図になっているところが面白い。
そして家の問題も、彼がどう説得しようかと考えあぐねている 間に両親は進路相談の紙を見て、でも頭ごなしに否定せず、 息子の本気度に母親も覚悟を決める、 という展開になっており、それを主人公との対話シーンなしに 済ませているところは上手い。(注記:2巻を読むと若干母親からの 絡みがあり、んー?そういうシーンを作るのかぁと若干の違和感。 相談してくれなかったのが寂しかった、的なまとめにしてさっくり切り上げてはいたが・・・)
美術やってた人なんかにはどう思われるのかわからないが、 外野の人間が読むにはこれはとても面白い。 なんでもできる人がうまくできない、 けどそこが面白い、ということに突き当たったという 幸せなお話である。 続刊発売済→ブルーピリオド(2) (アフタヌーンコミックス)
【データ】
山口つばさ
(やまぐちつばさ)
ブルーピリオド
【発行元/発売元】講談社 (2017/12/22)
【レーベル】アフタヌーンKC
【発行日】2018(平成30)年1月1日発行
※電子版で購入
■評価→
A(絶品)
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ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!
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