【オススメ】 田村由美/ミステリと言う勿れ


ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックス)

■【オススメ】皆が絶賛するのも尤もな一風変わった 推理もの。小学館作品なので電子版リリースに タイムラグがあり話題に乗り遅れるのがもどかしい。

小学館のコミックスは概ね電子版のリリースが 紙書籍版の発売より遅れたタイミングとなることが多い。 それが利益最大化になっているのならビジネスとして 正しいと思うが、書店優遇ということであれば ユーザー見えてないので大丈夫かと心配する。 まあいずれ街の書店が消滅すればリリースタイミングの 調整なんてのは過去の遺物になるのだろうが、 おかげで漫画は電子版のみで購入する ことにしている者としては小学館の漫画は買いづらい。 紙書籍の新刊リストでチェックしたときには、 まだ電子版で買えないので。最近は電子版発売時期が決まっており 予約も受け付けているのでボタン押しておけばいいことではあるのだが。 漫画の売上で電子版が紙版を越えたというデータが出たこともあり、 小学館も講談社同様、同発に踏み切ったほうがいいのではなかろうか。


という長い前フリは、本作が話題になっているなかで、 横目に見ながら、電子版はまだなのね、と思っていたからである。 2〜3週間もタイムラグあると、買い漏れするんですよ。 話題になっているときに即座に買い物かごに入れられないのは 機会損失である。特にこういう傑作については 出版社が足を引っ張ってどうする、と思いもする。


本作はユニークな推理ものである。主人公は一人暮らしの青年。 彼は人の心情を読むのに長けている。そんな人物が本領を発揮するのは、 警察にて、容疑者として取り調べを受ける場面。 冷静に自分の状況を判断しつつ、警察官それぞれの性格を見抜き、適切な アドバイスも授けつつ、自ら真相を見出そうとするのだった。


探偵という立ち位置ではなく、捜査する側ではなくされる側として 話が始まったのはなかなかに秀逸。内容としてはアームチェア・ディテクティブ、安楽椅子探偵ものに近く、主人公が推測したことを マシンガンのようにくっちゃべるというものであるが、 それをどう漫画に載せるか、という技術は素晴らしい。 人を入れ代わり立ち代わり配置できる取り調べという環境を うまく使い、絵としても飽きさせない空間を仕立てている。


でもこの設定だと続きものとしてどうするのか? と思っていると、件の取り調べで知り合った刑事が 主人公のもとへ訪ねてくる。なるほど探偵ものめいてくるのか、 と思いきや、彼はこれをスルー。しかし彼自身が事件に巻き込まれる 形で第二話は展開されていく。


まぁ、事件がないと推理ものには ならないので、探偵ものは奴が来ると事件が起こる状態になりがち だがそれを踏襲せざるを得ないのは致し方ないか。 とはいえ、面白いのは彼は事件の全貌が見えない中で、 わかる部分から読み解いていくから、であり、 そこが全貌を把握することありきの世の推理ものの成り立ちと 違うからだろう。


そして。主人公の発言には含蓄がある。これを、 ブログやらツイッターやらの発言のように 中軸に据えた作品とするのではなくて、 主人公に流れで語らせるものにとどめて 作品自体はより大きな構造を用意してその中の入れ子としているところが 上手い。主張の激しいキャラクターを、 フィクションの中に溶け込ませる仕組みが素晴らしい。 フィクションで大事なのは、セリフよりも、物語。 主張よりも、流れ。 全体として伝わってほしい何かがないのであれば、 作品として作る意味がない。 作品を作るということは、作品でなければ伝えられない何かがあるべき、 というかそうでなければ作品は作り上げることができないし、 そうでない作品は作品として面白いと感じてもらえない。 そんな当たり前のことを改めてしみじみと感じる逸品。


【データ】
田村由美 (たむらゆみ)
ミステリと言う勿れ
【初出】flowers(2017年、2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/1/10) 【レーベル】flowersフラワーコミックスα 【発行日】2018(平成30)年1月15日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックス)

話題沸騰★青年・久能整!ついに登場!!
『BASARA』『7SEEDS』の田村由美、超ひさびさの新シリーズがついに始動!! その主人公は、たった一人の青年! しかも謎めいた、天然パーマの久能 整(くのう ととのう)なのです!!
解決解読青年・久能 整、颯爽登場の第一巻!!
冬のある、カレー日和。アパートの部屋で大学生・整がタマネギをザク切りしていると・・・警察官がやってきて・・・!?
突然任意同行された整に、近隣で起こった殺人事件の容疑がかけられる。 しかもその被害者は、整の同級生で・・・。 次々に容疑を裏付ける証拠を突きつけられた整はいったいどうなる・・・???
新感覚ストーリー「ミステリと言う勿れ」、注目の第一巻です!!


■当サイトの著者他作品レビュー
【オススメ】 田村由美/ボクが泥棒になった理由
【オススメ】 田村由美/猫mix幻奇譚とらじ

■当サイトの月間オススメはこちらから


search this site.

mobile

qrcode

selected entries

categories

profile

others

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM