【オススメ】 朱戸アオ/インハンド


インハンド(1) (イブニングKC)

■【オススメ】パンデミック・ミステリ最新作。 フォーマットが定まり、安定の出来栄えに。

研究者である主人公のもとに、旧知である内閣の 危機管理部門から連絡が入る。そこで見せられたのは、 ある病床の写真。その患者は1977年に地球上から 根絶されたはずの天然痘にかかっていた。


片手が義手の天才研究者が助手とともに、 政府筋の依頼に応えつつも勝手に動く 行動派医学ミステリ。著者お得意の内容だが、 シリーズ化したことで役割が整理され、 より読みやすく読み応えもある 物語に仕上がっている。 そもそも主人公自身の話はほぼ描かれておらず、 こうした本筋をとっておいて展開できる シリーズ作品は、強い。


根絶したウイルスが なぜ今存在しているのか、それがどうして 蔓延しているのか。 スケール感がほどほどなのは 手始めとしてはよく、一巻丸々使わずに 最初のエピソードが完結するのは 手際が良い。読み応えある上に、 次の話も読めるのか、というのは嬉しい喜び。 そして次のエピソードは、パンデミックネタではない。 良く聞く題材ではあるが、楽しみ、というか興味深い。


本作から登場のキャラクター雪村潤月は 横走市出身ということで苗字は違うが「 リウーを待ちながら 」のキャラ転用スターシステム。 そうか、そういうこともするつもりがあるのか。


善悪両用性、デュアルユース、「科学は 公共の福祉にも戦争やテロにも平等に奉仕できる」 「否定するのは簡単だ」「でもそう簡単じゃないんだ…」、 「アメリカでは911以降国家科学諮問委員会が 論文のチェックをするようになったが今のところ トンチンカンな取り締まりばかりしてるぞ」 「それに歴史的に見てもっとも科学技術を悪用しているのは 国家だぜ」、 人の事情などどうでもいい、 などという主人公の主張は明快。安易に流れる意見への 否定は同意。 あとがき予告もどういう趣旨かわからないが 「そもそもスポーツは健康に悪い!」「だからドーピングなんてガンガンやればいいんだ ドーピングは古代オリンピックの時から行われている由緒正しい身体コントロールなんだぞ!」というセリフがあり、 また言いたい放題正論を言わせていそうで面白そうである。


【データ】
朱戸アオ
インハンド
【発行元/発売元】講談社 (2019/3/22) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ インハンド(1) (イブニングKC)
地球上から根絶されたハズの伝染病・天然痘を疑われる患者が都内で多数発生。牧野の依頼を受けた紐倉と高家は、感染経路を辿るうちに、これがただのアウトブレイクではなく、バイオテロの可能性があることに行き着く。犯人の正体、その意外な目的とは? 2018年イブニングでスタートした、義手の天才学者・紐倉哲が主人公の医療ミステリー。新シリーズ、いよいよ刊行開始!


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【オススメ】 那州雪絵/八百夜


八百夜(1) (ウィングス・コミックス)

■【オススメ】 不老不死の話芸人をトリックスターとした 千夜一夜系。 大枠の設定とより小さな枠の設定、 そしてそこに至るためのエピソードの作り方が上手い。

国の女性を殺しまくった残虐な王がいるという 小国。そこに訪れた旅の者。宿を、とお願いするが、 しかし旅人がこんなところに来るわけがない、 と警戒された挙げ句に銃撃を受け、跳弾で頭を撃ち抜かれてしまう。


主人公というか狂言回しとなるのはこの旅人。 冒頭で死んでしまったではないか、と思うと、彼は息を吹き返す。 不老不死の呪いを受けて、八百年を生きているのだと いう。確かに彼は殺されても死なない。彼が語る身の上話は、 竜宮城のエピソード。それは本当であるかどうかはわからない。 が、城内に首尾よく入った彼は、代替わりした幼き王様に 見出され、話を聞きたいとせがまれることになる。


旅人が経験してきた、のかどうかわからないが語る話は、 いわゆる童話寓話の類。その話で人の心を魅了し、癒やす。 一方で彼の目的はなにか。国の中枢の人物はそれを 他国の者の企みかと疑うが、死に目にあって、というか 死にはしないが死ぬほどの痛みは感じるために錯乱した 瞬間の彼は、そこでこの世の中の俯瞰した状況を伝えようとする。 つまりは世界の危機であるらしい。しかし何故それを そのまま伝えないのか?といえば、そんなものいきなり 理解されないからだろう。


よくある話、としても、 話の構造と運びかたが上手い。 どう組み立て、どう大きな話に広げるか。 そしてそれを、どこまで見せ、どこまで隠すか。 目先の話を面白く思わせつつ、 その先を面白そうだと匂わせて読者を誘う構成は、 プロフェッショナル。安心して不見転で買える 作家さんは貴重。


【データ】
那州雪絵 (なすゆきえ)
八百夜
【発行元/発売元】新書館 (2018/12/25) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ 八百夜(1) (ウィングス・コミックス)
トオワの国は、王が国中の女を虐殺したと噂される血塗られた国。そこにある日、謎の男がやってくる。山賊だと疑われた男は運悪く流れ弾に当たって死んだ。――が、なぜかほどなく生き返る。驚き騒ぐ人々の前で、飄々と男は自らを不老不死だと言い出し……。名手・那州雪絵が紡ぐ、新たなる物語の幕があがる――!!


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【オススメ】 小林有吾/ショート・ピース


ショート・ピース(1) (ビッグコミックス)

■【オススメ】素晴らしい青春。 高校の映画部を舞台にした、 天才たちの葛藤の話。 人物の絡め方が上手い。

2017年11月発行、と時間が経ってしまったが、 これは傑作。高校の映画部を舞台にしたお話。


物語は、天才を描く場合と凡才を描く場合とがあるが、 本作が描くのは天才。 ただし、一番の中心人物である 映画部の脚本・演出を手がける天才自身の話とはならない。 彼はある種、神のような存在で、彼がメンターとなり、 能力を引き出す。彼に絡むのもまた天才だが、 その天才の葛藤を描いており、その悩みは概ね 凡才のものとも通じるものであるのが上手い。


構成も素晴らしい。第一話は映画部でもなく高校でもない、 外側の人間から話を始める。仕事を彼ら映画部に持ち込み、 そして映画部に引っ張られていく。その過程で、 やりたいことがあるのなら大人のいうことなど気にしなくて良い、 成功した大人など過去の成功体験というレールに乗っている だけで、そのレールは未来に繋がっていない、 と見せる。読者がそんな気持ちになったところで、 次のエピソードは、大人の忠告に真摯に耳を傾けなかった人の 話である。良い振り幅で物語が進む。


一見素晴らしく見えても、天才には それがテクニックであることを見抜かれる。 よりプリミティブな思いを要求される。 天才は天才を知る、天才のみが天才を知る、 それが本作で唯一シビアでシニカルなメッセージかもしれない。


【データ】
小林有吾
ショート・ピース
【発行元/発売元】小学館 (2017/10/30) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ ショート・ピース(1) (ビッグコミックス)
『アオアシ』作者が描く感涙の映画撮影譚!
累計100万部突破の大人気作『アオアシ』の小林有吾最新作!
主人公は高校の映像研究部で監督・脚本をつとめる「映画バカ」恩田キヨハル。 その無邪気なまっすぐさは、「傷」を抱えた人たちの心を揺さぶり、魅了していく――
魂を抉り、爽やかな涙が溢れるヒューマンドラマ。


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【オススメ】 岩明均、室井大資/レイリ


レイリ 1 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)

■【オススメ】戦国を舞台に史実をベースにしつつ、 腕のある女子の話を描く。

戦国時代。丹波守岡部元信の領地で金を掛け合い ちゃんばらというか剣術勝負をする男たち。 しかし最後は勝ち残りの者が少女と戦うのが通例。 そして少女はその腕で打ちのめす。


既に巻数を重ねている作品だがご紹介。→レイリ 5 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)  この原作☓作画の組み合わせでつまらなくなるはずがない、 という読者の思いに応えてくれる一品。


一巻はほぼ話としては動かない、前段の話のみ。 しかしそうした内容ながら状況をきっちり読者に伝える 充実した助段となっている。 今川家から武田家となった名武将、 ただし時代の流れからしては負け戦の側。 岡部元信は天正九年までの命である。


少女は、その岡部丹波守が長篠の戦いの負け戦からの帰途で 拾い連れてきた者。彼女はなぜか戦場に出たがり、しかも 最後は自分も死すので迷惑をかけない、という。何故こうなってしまったのか、と悩み悔やむ丹波守。ただそれは彼女が経験したことを 乗り越えようとするためであることが一巻のうちに描かれており、 無駄に引っ張ることはしていない。


歪んだ状況を提示しつつ、明るくない未来へと進んでいく 話は当然読んでいて楽しいものではないと思うが、 それを読ませるだけの力と勢いがある一作である。


【データ】
原作=岩明均(いわあきひとし)、漫画=室井大資 (むろいだいすけ)
レイリ
【初出情報】別冊少年チャンピオン(2015年〜2016年) 【発行元/発売元】秋田書店 (2016/11/8) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→ レイリ 1 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)
長篠の戦いから4年、黄昏ゆく武田帝国と勃興する織田軍団の血戦のはざまで、数奇な運命を生きる少女の名はレイリ。巨匠渾身の原作を新感覚の鬼才が作品化! 衝撃の本格戦国時代劇、開幕!!


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【オススメ】 白井弓子/大阪環状結界都市


大阪環状結界都市(1)(ボニータ・コミックス)

■【オススメ】題名に首を傾げたがそのまんまの内容だった。古くからある霊的な超常現象と、未来的な技術との融合。

主人公は婦人警官。大阪の環状線で痴漢を逮捕する。この環状線は「O」という監視システムが配備されており、車内のすべてが記録されているのだった。そのデータを用いて、容疑者の犯罪を特定しようとした主人公。しかしその時、システムがエラーとなり破損してしまう。


主人公には幼少の頃、すぐとなりにいたはずの妹が神隠しにあったようにいなくなってしまった、という苦い過去がある。それが電車内での出来事だっただけに、車内犯罪がひと一倍気になる性質となった。そんなエピソードが、物語の大筋にも関わってくる。


作りが上手い。現代通り越して未来風なシステムが、実は古来からあるものと戦い制御するために生み出された、とする歴史と未来の融合感。霊的なものは、知覚すると実現してしまう、として、視えるものと、それを消すものとの対立構造を作りつつ、両者はそもそも同根でもあり、なので消す側にも視えるものとどう対峙するかで流派がわかれ、葛藤があるという仕組み。複雑な作りを、さらっと表現する描写は手練。


こうした話を作ると大抵は主人公の置き方が難しく、読者に全体像を見せるためとして部外者ポジションとすることが多いが、その場合話に関与させるのに無理が生じがちになる。時に二手に分断して話を進める作品があるのはその無理を整理するため。だが本作は主人公を、話の本筋である視えるものの領域にも置くことで、きちんと話に巻き込まれるのが自然な構造としている。


「攻殻機動隊」的なものも感じながら読んだが、巻末に収録された読み切り「ノックアウト・ボディ」のほうが世界観は近かった。とはいえアプローチは全然別。しかし、アオハルがテーマでこの読み切りになるとは…。


【データ】
白井弓子 (しらいゆみこ)
大阪環状結界都市 (おおさかかんじょうけっかいとし)
【発行元/発売元】秋田書店 (2018/10/16) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→大阪環状結界都市(1)(ボニータ・コミックス)
大阪には、絶対に視てはならぬモノがいる。2028年の大阪。警察官・森かなたが勤務する大阪府警察O課は、大阪環状線内で起きた犯罪を見つけるため、Oシステムと呼ばれる車両スキャンシステムを捜査に導入していた。しかし、ある日Oシステムが映し出したのは、人ならぬ“なにか”で…!?


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【オススメ】 金田一蓮十郎、芋Uto/モーメント


モーメント (KC デザート)

■【オススメ】非常に可愛い、学校舞台の 青春物語、3編。

下駄箱に手紙を入れられていた男子高校生。 送り主は見た目も存在も派手な女の子だというが、 彼は全く知らない。そんな相手から何? と思ったが、内容は暗号文だった。 ミステリ好きの血が騒ぎ、彼は答えを解明しょうとする。


そんな洒落た話から始まる本作は、 同じ学校を舞台にしたエピソード3編からなる 連作もの。出会いのきっかけから描き、 その可愛らしい展開は、ほのぼのとしつつ、 引き込まれる。シチュエーションの 設定がとても良い。


これを姉妹共作で作っているというのは面白い。 金田一蓮十郎作品が好きな人は違和感なく 普通に楽しめると思う。それがいいことなのか どうかはわからないが、作品の出来が良いのは確か。


【データ】
原作・漫画・漫画原作=金田一蓮十郎(きんだいちれんじゅうろう)、 イラスト・漫画・漫画原作=芋Uto (いもうと)
モーメント
【発行元/発売元】講談社 (2018/10/12) ※電子版で購入
■評価→ A(絶品)
■購入:
amazon→ モーメント (KC デザート)
金田一蓮十郎が初原作で実妹芋Utoとコラボ! ありえないと思っていた相手と恋に落ちる3つの短編読み切り集が登場です。謎の暗号を解いたら中身が×××××だった『たとえばこんなミステリー』、超〜鈍感すぎるコワモテバレー部男子とのスローラブ『鋼のボーイフレンド』、雨が降るたびに、普段話さない幼なじみと相合い傘をすることになる『呪いの傘』。まさか、君を好きになるなんて…な恋を集めたピュアきゅん短編集です。


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【オススメ】 たなか亜希夫/リバーエンド・カフェ


リバーエンド・カフェ(1) (アクションコミックス)

■【オススメ】え?ここで一巻終わりなの?殺生な・・・。 震災後の石巻で何もなかった土地に建つカフェの話。

川開きだか祭りの際に、男たちに言い寄られる女の子。 ネットだかSNSだかで、やらせてくれる断れない女、 という話が出回っているらしい。それを逃げるところで、 暴力のにおいのぷんぷんする人に助けられる。 その人物がカフェを始めようとしており、 彼女はその手伝いに自然と巻き込まれるのだった。


震災の陰が落とす話。ヒロインにはPTSDがあり、 学校でのいじめは「絆」という言葉に違和感を抱いた ため。実際、絆なんて言葉はプラスのイメージで 使われてなど来なかった、拘束、支配、という 意味での縛りがそもそもだと聞くので共感するばかりだが、 それがいじめに発展するということは・・・まぁ、 あるのだろうな。


基本的に、閉鎖的な組織は、そういう傾向があると思っている。 田舎のソサエティとか。会社もそうだろうな。 まだ都会は、人が多いのと、そういうことを良しとしない文化 がないでもないので、あんまり表に出てこないとは思う。 乗り換えるべき先もあるので、ないところは地獄だろうなあ。 その中で、彼女がどうにかこうにか日々を過ごしているのは、 卒業するまでの我慢と思っているから。健気である。


そんな彼女の話がありつつ、震災を乗り越えようとする 人たちの話が、さほど深刻さを伴わず描かれていくところが 凄い。まぁ、世界は広いのだ。そういうことだな。そして、 一巻の終わり方が凄い。そこで終えるのかい!同時発売の続刊も 買えということですな。→リバーエンド・カフェ(2) (アクションコミックス)


【データ】
たなか亜希夫 (たなかあきお)
リバーエンド・カフェ
【初出情報】漫画アクション(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】双葉社 (2018/9/28)
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→リバーエンド・カフェ(1) (アクションコミックス)
宮城県石巻。あの震災から数年が経ったこの地に住む高校2年生・入江サキはある夜、謎の男と出会う。不埒な輩に絡まれていたところを助けられたサキ。北上川の中瀬に灯る明かりに誘われ、少女は不思議なカフェへと辿りつく。そこで出されるコーヒーには、人生の楽しさや悲哀が入り混じっていた――。 石巻出身のたなか亜希夫が震災後の故郷を描く最新作、´巻同時発売!!


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