【オススメ】小花美穂/あるようでない男


あるようでない男 (集英社文庫(コミック版)) (amazon), あるようでない男(漫画)の電子書籍|新刊 - 無料・試し読みも!honto電子書籍ストア (honto)

■【オススメ】なんとなくの流れで百貨店の社長代理となった若社長。彼は、〇〇があるようでない男、 と言われていた。その〇〇とは。

24歳にして大手デパートグループの社長代理を任された青年。その理由は社長令嬢が婚約者であり、社長が彼のことを気に入っているから。そんな社長は入院中。ということで、そんな事態になっている。グッドルッキングな彼は女子社員に人気。しかし当人はそういったことに無頓着。ある日、売場を巡回に回っていたところで、クレーマーに遭遇。進物用に買った財布の色が違った、そのことにお詫びがない、という相手に対応したところ、落ち着いた客からおわびの品など良いので自分がバーテンダーを勤めているバーに来てくれたほうが嬉しいと誘われる。そこへ同窓会の二次会の場所が決まっていないから、と彼は二つ返事で答えるのだった。


2003年に単行本化で2013年に文庫の作品が2023年に電子化されたのか?kindleなら2013年からあっらのかしらん。大元の高校生編は1996年作品。そういわれれば確かにそんな絵柄ではあるが話運びは今年の作品と言われれば何の疑問もなく受け入れる内容である。せっかくなのでご紹介。このブログ開始は2005年なので範疇外なんですが。なお自分では開始が2006年だと勘違いしており今調べて2005年か、と確認した次第。なので「こどものおもちゃ」や「Honey Bitter」(2004年刊行開始)が紹介されていないのですが。それはともかく。


作品は、20代で若くして社長になっているが老成したような雰囲気で、女運があるようでない男、という評価 の人物が主人公。彼には特に希望もなく流されるだけ。そしてEDであるという設定。そんな彼がクレーマーのバーテンダーに惹かれていく。では婚約者は、社長代理としての立場は、という話なのだが、その辺をぬるっと転がしていくのは見事。


そんな話を4話完結で展開したのちに収録されているのが、読みきり版。それが7年前に描かれた高校生編というのは、だったら時系列にあわせて冒頭にもってきても、と思ったが読んでみると本編とニュアンス違うのでまぁこの掲載順で正解か。そして1996年の時点で高校生を描いた話で主人公は既にEDで老成しているという。


社長室長の高井さんのキャラクターが良い。というかこういう作品が1996年、2003年にすでにあるのでダイバーシティだのポリティカルコレクトだのやいのやいの言われても日本人としては何言ってるの?いまさら?って話になるよなぁ……。一巻完結です。


【データ】
小花美穂
あるようでない男
【発行元/発売元】 集英社 (2013/5/17) ※電子版で購入
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【ページ数が多いビッグボリューム版!】工藤雅深は24歳の若さで大手デパート「松高屋」を率いるイケメン社長代理。温厚な性格のため、女性社員たちの間でアイドル的存在の彼は、仕事もプライベートもそつなくこなす、そこそこ男(ヤロー)だった。若いのにどこか老成した雅深の前に現れたのはバーテンダーの恵梨。彼女の明るく表裏のない性格にひかれ、雅深は過去のトラウマからも解放され始めるが…。※文庫版の内容です。 【同時収録】分解ファイル/文庫版書き下ろし あとがきエッセイ


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【オススメ】ありま猛/連ちゃんパパ


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■【オススメ】ギャンブル依存症たちのお話。

牧歌的な絵で「ナニワ金融道」や「闇金ウシジマくん」 の顧客に出てきそうな話を展開していることが 昨今の電子書籍化により発掘され話題となった作品。 電子書籍化は2018年だが雑誌連載は1994〜1997年の様子。


合冊版1巻は4話収録。パパは小学校教諭で、妻子との三人家族。 なのだが、家に帰ると書き置きとともに妻は蒸発。そこへ 借金取りがやってくる。借金額は300万円。妻は町内ではパチンコ狂いで 有名だったらしい。


貯金通帳には残高なし、勤務先まで付き馬で来られ、 親戚知人を回るが金策ははかどらず。そんななか、 息子がテレビのニュースで母を見かけたとして、 会いたい、と言い出すのだった。


一巻時点では失踪したパチンコ狂いの妻に振り回される話。 息子の貯金通帳頼りに旅を始めるが荷物を置き引きされ、 それは無事に戻ってくるが妻が男連れで逃げていることを知る。


子どもは母に会いたいというがオトナの機微はわからない幼さで、 夫も夫で妻を許したいという心があり、それに妻はほだされたか、 というともっと上手で。登場人物のなかでは借金取りが、 取り立ては厳しいものの最も人情味があり、 ただしそのおかげで話が複雑化して主人公たちがより深みに 嵌っていってしまっているとも言える。


主人公が頼る大学時代の同級生のエピソードが一番 単純で、大事にならない前に体で返すという話なのだが、 とはいえ借金取りの本来の仕事は全額返済させずに 細く長く搾り取ることだろうからどうなのだろう。 主人公の仕事が公務員でなければ妻も借金額はかさまなかったわけで。 とはいえ300万円でしかないんだよな…。


なお巻数重ねると主人公もかなりダークサイドに堕ちていきます。 借金取りに感情移入して読むとちょうどいいかな…。


【データ】
ありま猛
連ちゃんパパ
【発行元/発売元】 秋水社ORIGINAL (2018/3/29) ※電子版で購入
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【この作品は同タイトルの合冊版です】パチンコ狂いの妻が突然の家出!!残された息子と二人、妻を探して日本中を巡る放浪記。300万の借金に残高のない預金。強面の借金取りに追い立てられながら、わずかな手がかりを元に妻を探して日本中を旅回り。少ない軍資金で日本中を旅するには…パチンコしかない!!妻に付き添い門前の小僧となっていた息子のナビで、パチンコしながら旅費を稼いで手がかり探して行脚の道のり。追いかけて来た借金取りから逃げながらも父子二人の旅は続く!!


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【オススメ】ありま猛/あだち勉物語 〜あだち充を漫画家にした男〜

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【オススメ】久部緑郎、河合単/ラーメン発見伝


ラーメン発見伝(1) (ビッグコミックス) (amazon), ラーメン発見伝 1(漫画)の電子書籍 - 無料・試し読みも!honto電子書籍ストア (honto)

■【オススメ】商社勤めのラーメンマニアは自分でも屋台を引くセミプロ。 そんな彼がラーメン業界界隈の色々に関わりながら成長していく。

旧作案内。2009年からの「らーめん才遊記」、2020年からの「らーめん再遊記」に続いていく作品の一作め(単行本初版2000年発行)。商社勤務だがグータラなサラリーマンが主人公。彼は職場ではだらしないが、脱サラしてラーメン店を開業するという夢があり、会社には内緒で夜は屋台を引いて経験を積んでいる。ラーメン屋で修行しないのは「自分の味」を見つけないと意味がないから、そして開店資金をためるにはラーメン屋で働いて安月給でやりくりするより堅実な会社でいっぱい給料もらうほうが良いから…。アルバイト・副業禁止な会社の中で、ラーメンフリークな同僚女性だけが彼の屋台を知っている。ということで、基本この二人がセットのバディものとして物語は進んでいく。


冒頭のエピソードでは、会社ので生き方として、会社なんて自分の幸せの道具に使うくらいでちょうどいい程度のものかもしれない、という話が出てくる。それは異動していく上司のセリフ。一方で新しい上司は、彼の裏稼業を知ってか知らずか、彼のラーメンや食に関する知識を本業にも動員させ、彼を仕事にコミットさせる。かなりのやり手。


そして話は、客の声に右往左往して自分の味を見失いかけたラーメン屋と、味がわからず情報を食うような客を相手に仕掛けて商売を繁盛させているラーメン屋が登場する。対比される主人公は、自分の味、自分のラーメンを見つけられていない。ラーメンは結局、どう際立ってどう目立つかというところが注目される。しかしマニア受けするものが繁盛するとは限らない。またマニアや常連の評価が正しいとも限らず、批評する者が味をわかっているわけでもない。まぁ作り手の人はみな思っていることだろうが。このサイトのようなレビューも同じ穴の狢であって、本質的には作り手側とは対立する存在だとは思う。もちろん共闘というか共鳴共感できる場合もあるだろうが。実作者はレビューサイトなんて読まないほうがよいと思っている。なおディレクションやプロデュースする立場の人は作り手のかわりにレビューを熟読して参考になるアイディアを取捨選択して取り入れていくことが必要と思いますが。まぁレビューなんざ役立たないよというならそれはそれで構わないけれども何かしら参考になる情報源はあるべきかと。


辛辣な意見も述べる繁盛店の店主は、ビジネスという見地でラーメン屋を語り、その点でアマチュアである主人公を批判する。しかしこの店主もラーメンに対する愛はあり、味がわかっている客には一目置く。主人公にとって自分を切磋琢磨するのはこの店主とのやりとりであり、店主の側もその側面はある様子。


一巻でおおよその形がしっかりと作られているのが見事。しかしラーメンばっか食っててその体型…まぁ若いからね…。


【データ】
作=久部緑郎、画=河合単
ラーメン発見伝
【発行元/発売元】 小学館 (2000/4/26) ※電子版で購入
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上司の栄転祝いのため、評判のラーメン店「高津家」を訪れた藤本。ところが、出されたラーメンを一口食べた彼は、「まずいッ!!」と大声で叫ぶ。当然、店の主人に目を付けられてしまうが、藤本は謝るどころか、自分ならもっと美味いラーメンを作ることができる、と豪語し……!?


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久部緑郎、河合単/らーめん才遊記
河合単/銀平飯科帳
河合単/マンガ・うんちくラーメン

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【オススメ】江上鴻基/自動車部品メーカー電子営業物語


自動車部品メーカー電子営業物語 (アクションコミックス)フランス人独裁CEO VS 元請け営業マン 自動車部品メーカー電子営業物語 (アクションコミックス) (amazon), フランス人独裁CEO VS 元請け営業マン 自動車部品メーカー電子営業物語 (honto)

■【オススメ】自動車メーカーのV字回復の裏で、 理不尽な要求のなか立ち回る部品メーカーの営業のお話。

旧作の全一巻本。所蔵本は殆どを電子版に買い替える中、 書棚に残っていた一冊だが、昨年来のゴーン騒動のなかで 電子化されていたのね。しかしタイトルすごいことになってるな。 そしてレビューしていたと 思ったら本作は2004年リリース(※奥付の発行日。実際は2003年リリースなのか?)なので2006年開始の 当ブログでは漏れていたのだった。


舞台は自動車部品メーカー。ちゃらんぽらんと目され上司には 目を付けられるが、事態の本質を見抜き調整し時にはハッタリも かます手段を選ばぬスーパー営業マンが主人公。自動車メーカーから 無理難題を突き付けられるなかでどうポジショニングしていくか、 リアリティをもって描かれた佳作である。


で、この自動車メーカーがニッセンというところで、 そこがフランス・ルモーと提携しフランス人社長となり、 ニッセン・サバイバルプランなるコストカットによるV字回復を 謳うというお話。このNSPには終始生暖かい目で、 表向きはV字回復で経営が称賛されているけれどもその実態は… というのをこの時点で余すところなく描いている。 自動車メーカーの経営、そして提携先のフランスのメーカーの技術、 いずれもその質を問うているもので、まぁ、当時から そういう感じで見ていた人たちは多いよなぁと思う次第。 コストカットはバカでもできる。まぁ、そういうことである。 実際、会社はうまく行かなかったわけだし。


ということを踏まえて読み返すとますます面白い。 いま読んでも話は丁寧。ここまで深く踏み込んで描く漫画はそうそうない。 このあと出た「 零細リベンジャー 」も面白く、こちらは銀行の重役を父に持つ経営コンサルタントが 中小企業を助けていく話なのだが、物語の構造は本作と似ていて 傑作。なのだけれど2巻が出なかった。連載はどうなったのか。 著者はこの2冊以外に刊行がなく、しごく残念。 どうしてらっしゃるのでしょうか…。


【データ】
江上鴻基
自動車部品メーカー電子営業物語
【発行元/発売元】 双葉社 (2004/2/28) ※紙書籍で購入:以下リンクは電子版
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2019年のカルロス・ゴーン逮捕に際して話題になったコミックスが、待望の電子書籍化! 1999年のある日、窮地に立つ大手自動車メーカー・ニッセンのフランス人社長が、大幅なコスト削減策を打ち出した。その影響は系列の部品メーカーに大津波となって押し寄せた。そんな中、元請けメーカーの営業マン難波は、ニッセン担当へと異動になる――ニッセンV字回復の裏側で、コストダウンに奔走した企業戦士たちを描いた、リアリティ抜群のフィクション。 2003年発売のアクションコミックス『自動車部品メーカー電子営業物語』を改題のうえ電子書籍化。 ※電子版時の情報※


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【オススメ】 江上鴻基/零細リベンジャー

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【オススメ】 星野茂樹、石井さだよし/解体屋ゲン


解体屋ゲン 1巻 (amazon), 解体屋ゲン (honto)

■【オススメ】建設業それも解体業者を描く作品。 力任せ勢い任せな面もある一方で、インテリな面もあり、 時代を描いた内容も多い。

今回は2002年連載開始の本作を番外としてご紹介。 現在も連載中。単行本は長らくまともに出ていなかったが 今では電子版で読書可能。既刊71冊。 1巻は268ページの分量で読み応えあり。


話は一人で解体業を営む人物の話。体力はあるがカネはない。 そこに、大手ゼネコン系列に勤める美女が仕事を持ち掛けてくる。 こうして美女と野獣のバディものとして話が進行していく。


悪い人物が絡み勧善懲悪的な展開になることが多いが、 そうでない話で登場する人物は今後も密な関係となりレギュラーや 準レギュラーとして出てくる、仲間集め的な物語でもあるが、 一巻時点ではそこまで壮大な話になるとはわからない。


主役のゲンさんは粗雑に見えるが、世界を股にかけて 爆破解体の仕事をしていた過去もありグローバルな面も。 仕事については、続刊では 関係する書籍を英文含めて読み込んでいるとの描写もあれば、送られてきた説明書に目を通さないといった描写もあり、ずぼらな面とインテリな面とで両極にぶれる。 この幅があるからこそ長く続く作品になっているのだろうが。


放っておくと男しか出てこない話になるところを、 うまい形で女性を放り込み、バディものとして恋愛要素も加えたのは 見事。なおこの作品は時間が止まっている話ではなく 人間関係がどんどん積み重ねられていくタイプの作品なので、 どんどん読み進めていってこそ面白さが見えてくる。 時代の雰囲気も反映されているので本当は初出情報が欲しいところだが…。


【データ】
原作=星野茂樹、作画=石井さだよし
解体屋ゲン(こわしやげん)
【発行元/発売元】 電書バト (2019/6/1) ※電子版で購入
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借金まみれで自堕落な生活を送る、孫請け解体業者の朝倉巖(通称ゲン)。しかしゲンは、世界を股にかけて活躍した爆破解体技師だった。その噂を聞きつけた大手ゼネコン社員の慶子は、ゲンをもう一度表舞台に引っ張りだそうと画策する。 ゲンと慶子の出会いを描く「爆破解体」、家を丸ごと移動させる曳き家を描いた「曳き家のロク」、自殺志願のクレーン技術者ヒデが登場する「初仕事」他。


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【オススメ】 剣名舞、石井さだよし/大江戸どんぶり繁盛記

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【オススメ】 古谷三敏/BARレモンハート


BARレモン・ハート : 1 (アクションコミックス) (amazon)

■【オススメ】マスター一人で切り盛りする町外れのオーセンティックなバーに 夜な夜な常連が飲みにやってくる。

思うところありご紹介、旧作紹介のマンガ一巻読破クラシックス。 今回取り上げるのは 言わずとしれた、バーを舞台に描いた酒うんちく漫画の元祖。 冒頭では客がかしこまって訪れるが、そんなにハードルの高い 店ではないことが示される。


当初は客を色々かえてバーテンダーをホストに展開する構成に見えたが、 二人の常連を用意。特に 酒のことを知らない常連、というトリッキーな存在を設定したおかげで、 酒のイロハから話に取り上げることができる。だがそれが面白いかというと…。 客を中心に叙情的な話を組み立て最後に彩りでバーレモンハートを 登場させるエピソードのほうが際立った出来。落語家の話も、 酒飲みの描写が巧い巧くないが絵からはわかってこない…のだが 著者には「寄席芸人伝(1) (ビッグコミックス)」という名作もあるのでまぁ敢えてなんだろうなぁ…。


そんな話が俄然面白くなるのは後半。同時代感が作品に強く反映されてから。 新しく発売されたばかりの酒としてニッカ「フローム・ザ・バレル」が紹介される。おお、フロム・ザ・バレル!長年飲んでいたのであまり意識しなかったけどこれはアルコール度数51.4。なんで?というとUKプルーフにあわせた度数にして通常の43度より高くなったとかなんとか、ニッカの方に聞いた覚えが。ボトルもスタイリッシュで格好いい、のだけれど、正直注ぎづらい。このクレームも伺ったところよくあるようで…。


赤電話、長距離電話、マッキントッシュ、プリンターテレビ、レーザーディスク、ワープロ…こういう風俗を取り込んだものは当然古びるが一周回ったところで時代色が楽しめるようになる。小道具は必ずそこから時代を感じさせて古びてしまうので使い方は良し悪しなのだけれど、逆に本作の場合は味になり、今読めばノスタルジーを感じさせる。しかしおそらく当時からもある種のノスタルジー色があった話のはずで、それは 早くから老け役をやっていた笠智衆のようなものか。


奥付の(C)表記が1985なのだが販売サイトの発行日は1986年。なお電子書籍の元本は2008年の47刷。しかしhontoの電子書籍が660円って、紙書籍556円より高いのは何なの…Amazon Kindleでは528円、unlimitedなら1巻は無料で読めます。


【データ】
古谷三敏 ファミリー企画
BARレモンハート
【発行元/発売元】 双葉社 (1986/2/18) ※電子版で購入
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心優しき男たちが夜毎集う酒場、『BARレモン・ハート』。名人マスターの人を見る目は酒を見る目。マスターの薦めるカクテルは人生のブレンド。酒ウンチクと人生模様を語る大人のための、酒、グルメコミックス。酒コミックの元祖1巻目。


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パンデミック懸念のなか、朱戸アオ作品を再読する。


パンデミック懸念のなか、朱戸アオ作品を再読する。「インハンド」が連載中でドラマ化もされた朱戸アオ氏。件の作品はバイオテロ的な話であるが、著者の他作品ではパンデミック、アウトブレイクについて深く掘り下げたものがある。


Final Phase」(一巻完結)はウイルス感染で都市封鎖、クラスター感染が描かれる。…今の新型コロナウイルスと同一視して不安や恐れを増幅してしまうと困るのだが、マスコミや野党議員の追及は現実どおりな感じ。とはいえ現場ではそれどころではないのでその辺りの外野にはほぼ触れられない。そして医療従事者が危険なのもまた現実のとおり。

なお作中でもパンデミックの例としてちらりと出てくるスペインかぜ。別にスペインが発生源でもなんでもなく、最初の流行が第一次世界大戦時で戦争当時国は情報統制していたので、中立国だったスペインで最初に報道されたから、ということらしい。全人口の3割が感染したとされ、高齢者は行き残った反面青年層で大量の死者が出たという。そしてこれは当時としては未知のウイルスだったが、今でいうA型インフルエンザである。


リウーを待ちながら」(全3巻)は過去にあった伝染病の蔓延。医療崩壊がどういうものかが描かれている。全数検査が何をもたらすかは、まぁマスクやトイレットペーパーの品切れ状況を見れば連想できるはずなのだけれど、有識者の中には1テーマでしか状況を把握できない方が多くいるようで…。本作は事件の起きている現場を描いていることから自分自身にとって最適な行動に走ろうとする人はいても、傍観者的な立ち位置から役に立たない話をする人物は出てこない。そして、有志の協力が得られている。現実では専門家が勝手に持論をぶちまけて混乱を招いているというところがなんとも…いや表に出ないところでまともな人達がまともに動いているのだと思うが。

両作品とも、最終的にはパンデミックは終結する。今までの現実もそうだった。今回の新型コロナウイルスは、このままであればただの悪性の風邪、新型インフルエンザの域を出ない。変性する恐れはあるが、それは防ぎようがない。そして、ウイルスを抑制することはできない。次の冬も流行することはほぼ確実である。その際にワクチンができていれば、インフルエンザと同様の扱いで良くなるだろう。

現状のコロナウイルスへの日本の対応は過剰すぎると思うが、とはいえどうするんだ!という無知の声に対してはある程度対策を打つ必要があり、かつ感染のピークを抑制するという目的と合わせると妥当なのだろう。全量調査を目指すのは統計学的にしか意味がなく、検査は従事者への感染リスクを高めるので医療崩壊に繋がる。まぁ今回はパンデミックとしては重篤患者も死亡者も少ない。本物のパンデミックに向けての予行演習と考えると良いのかもしれない。

朱戸アオ作品レビュー
【オススメ】 朱戸アオ/インハンド
【オススメ】 朱戸アオ/インハンド プロローグ
【オススメ】 朱戸アオ/リウーを待ちながら
【オススメ】朱戸アオ/Final Phase
【オススメ】 朱戸アオ/ネメシスの杖

【オススメ】 南勝久/ザ・ファブル


ザ・ファブル(1) (ヤングマガジンコミックス)

■【オススメ】得意技を封じて生きる、殺し屋コメディ。

実写映画が公開され内容も評判ですが。紹介漏れでしたのでこの機会にご紹介。


天才と称される殺し屋の話。ファブル、と呼ばれ恐れられるが、当人は 「おまえらが勝手にそう呼んでるだけだ」「俺はただ殺すだけの」「プロだ!」と。


そんな彼が、ボスの命により、殺しの現場から離れ、一般人として暮らすハメになる。地縁のない大阪の地で、仕事仲間と「兄妹」として、組織が関係する組に預けられる。素性を知るのは組長と若頭のみ。とはいえ若頭は彼らのことをよく思っておらず、追い出そうと画策する。


そうした話だが設定もテイストもコメディ。主人公は特に何も考えずに一般人として生きることを受け入れているが、これは、彼のプロ意識の為せる技。素性を知られずに生きるのがプロだ、「臨機応変ってのを覚えたらおまえはもっとプロになれる!」という言葉に乗せられて、彼はその気になる。


なぜ一般の生活を送らせるのか、送り出した側のことを思えば…であるが、そこを頓着しないある種のんきな話なので、飄々と物語は進む。絶対的な天才を主人公としつつ、その能力を封印した話としたのは面白い。しかも当人がそれにノリノリというのが白眉。


【データ】
南勝久
ザ・ファブル
【発行元/発売元】 講談社 (2015/3/6) ※電子版で購入
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“寓話”と呼ばれし、風変わりな“殺しの天才”が、この町の片隅にひっそりと棲んでいる──。殺しのプロとして“一般人”になりきれ! 野蛮で、滑稽な、大阪DAYS。『ナニワトモアレ』&『なにわ友あれ』の南勝久、銃撃最新作!!!


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南勝久/なにわ友あれ

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【オススメ】 遊知やよみ/福家堂本舗


福家堂本舗 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

■【オススメ】商家舞台の三姉妹物語。 古くさくオーソドックスな少女漫画だが 京都の老舗という設定なのでうまくはまっている。

1995年から『ぶ〜け』に連載され、2000年の雑誌休刊にあわせて 完結となった作品。全11巻だが電子版は文庫にまとめられた7巻 にて刊行されている。その旧作が 2016年にAmazonプライムビデオで早見あかり主演で ドラマ化された。→「福家堂本舗-KYOTO LOVE STORY-」予告 第1弾 そして続編も開始。→ 月刊YOU|福家堂本舗 弐 ということでいずれ単行本を紹介するときのために本作もご紹介。


福家堂という京都で長く続く老舗の和菓子屋を舞台にしたお話。 語りては末っ子の三女の設定ではあるが、視点は特に固定されていない。 話は、この老舗の店をどう存続させるかを中軸に、三人の恋愛模様が描かれる。


少女漫画としてオーソドックスというか、ホームドラマという点で古き昭和の時代 の作品に近い。塩森恵子氏の「 希林館通り (マーガレットコミックスDIGITAL) 」あたりが似ている。全くもって新しい題材ではない。しかし、継ぐべき家の ある人にとっては古いも新しいもない、身近でシリアスな問題である。 だから、そんな題材古臭いね、という印象自体がナンセンスなのだろう。 絵に関しては最新の遊知やよみ氏作品を読んでいる者には 少々安定していないなとも思うだろうがそれはそれ。


恋愛ものなのだが作品開始当初には三姉妹いずれも恋がまだ始まっていない。 その何もない状態から始まるので読者としてはとっつきやすい。 老舗和菓子店を舞台にしたホームドラマもの なので登場人物が比較的多めになるので、人物の交通整理が 肝要となるが、その点はバッチリ。三姉妹の父は既に亡くなっており、 母が切り盛りしている。職人も少人数で主要人物しか登場しない。 出て来る回数の多い人物は物語の主軸にきちんと絡む。


・・・というよりも当初は三話連作の読み切りで、三姉妹それぞれの 恋模様について描いて終わり、ということだったらしく、それを長期連載に 引き伸ばしたものなので、全話読んでも結局のところ冒頭三話 の話に舞い戻る。逆にいえば軸がぶれない作品でもあった。 ちなみに続編は創業480年で当代で18代目となっており、 作品開始時から30年後、三姉妹の子供の世代の話になる様子。


【データ】
遊知やよみ
福家堂本舗
【初出情報】ぶ〜け(1995年〜) 【発行元/発売元】集英社 【レーベル】マーガレット コミックス 【発行日】2008,2012年発行(オリジナル1995年11月・1996年6月) ※電子版で購入
■評価→ B(佳作) ■続刊購入する?→★★★★★
■購入:
amazon→福家堂本舗 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
【ページ数が多いビッグボリューム版!】福家堂は京都にある老舗の和菓子屋。しっかりものの長女・雛、おてんばの次女・あられ、天然の三女・ハナが暮らす。そんなある日、銀行に勤めている桧山家の御曹司・薫が、突然雛に結婚を申し込み…。


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【オススメ】 遊知やよみ/これは恋です
遊知やよみ/素敵ギルド

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林律雄、高井研一郎/総務部 総務課 山口六平太


総務部総務課 山口六平太(1) (ビッグコミックス)

■実はスーパーマン的な働きをする縁の下の力持ち。 「島耕作」や「サラリーマン金太郎」と違い今読んでも共感が得られるのは こちらだろう。

高井研一郎氏のご冥福を祈りつつ、「山口六平太」の一巻を 改めてデジタル版で購入して読んでみた。


サラリーマン小説の 漫画版であり、主人公はスーパーマン的活躍を見せるのだが、 それが出世という文脈が軸になる「島耕作」と違い本作はあくまでも 普通の会社員の日常が描かれている。 類似作としてあげるとすれば「釣りバカ日誌」であり、 「OL進化論」であるのだろう。


1987年刊行の一巻の内容は当然今読めば古臭い内容である。 が、根本的な部分は2016年の今も日本の会社は変わっていない。 それがよいのか悪いのかわからないが。


でもこんな会社いまどき・・・と思うのであれば、 総務課というのを、お客様対応係、クレーム対応担当 と読み替えればすんなりと入ってくる内容である。 そうか、基本的に人の馬鹿さかげんは変わらないんだな、と。 そんななか、一手先を読む六平太の凄さ。 ただ、その六平太の凄さを周囲がわかっている、というのが この作品の真の良さだろうか。


【データ】
作=林律雄(はやしのりお)、画=高井研一郎 (たかいけんいちろう)
総務部 総務課 山口六平太
【発行元/発売元】小学館 【レーベル】ビッグ コミックス 【発行日】1987年3月1日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→総務部総務課 山口六平太(1) (ビッグコミックス)
大日自動車総務部総務課の山口六平太は一見、うだつの上がらないサラリーマン。だが、本当はどんな難問も解決するスーパーマンだ。とぼけた顔とたばこクルッの秘技を持つ六平太。今日も何でも引き受けます! 総務という会社の要に所属する六平太の姿を通し、どこにでもある日本の会社社会の姿を描いた、サラリーマン傑作マンガ!!


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やまさき十三、高井研一郎/プロゴルファー貘

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