2016年のベストセレクション

・2016年もありがとうございました。紙書籍は結局読む時間がないので電子書籍オンリーに来年は戻します。また、ゴシップ報道の多い文藝春秋と徳間書店、内容に責任を持たないのに偉そうな新聞社各社の本は購入停止、粗製乱造なKADOKAWAは評判次第での購入に変更しました。サイトは閉鎖しない程度には頑張って更新していきます。

1. うめざわしゅん/ピンキーは二度ベルを鳴らす

■【オススメ】裏社会で有名な存在が 自分の行き方を貫くハードボイルドな物語。この設定でコメディ色を一切差し込まなかったストイックさが秀逸。 → ピンキーは二度ベルを鳴らす 1 (ビッグコミックス)
2. 堀尾省太/ゴールデンゴールド

■【オススメ】少女が拾ったものは福の神、なのか? 思い込みが交錯するブラックなコメディ。著者の前作は時空を移動してしまうSF「 刻刻 」。傑作だった同作と方向性は違うが、 こちらもオカルティック。密かに怖い。 → ゴールデンゴールド(1) (モーニングコミックス)
3. 河原和音/素敵な彼氏

■【オススメ】こんなボーイフレンド、いたらそれは最高だろう。結構面倒で薄っぺらそうになってしまう可能性があるヒロインを見事に描いた一作である。オススメ。 いやあ河原氏は上手いね。 → 素敵な彼氏 1 (マーガレットコミックス)
4. 志村志保子/ごちそうは黄昏の帰り道

■【オススメ】勘当された女性が一人暮らしを奮闘中。 そこで彼女は人生を意識的に生きるようになっていく。 この飄々とした感じはかなり好み。特に男性の不器用さは 海野つなみ/逃げるは恥だが役に立つ に似たテイストである。 → ごちそうは黄昏の帰り道 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
5. 犬上すくね/蛇沢課長のM嬢

■【オススメ】有能な営業マンが実はマゾ、それで ご主人様としてロックオンされてしまったヒロインのお話。 話は極上だが、それを超えるのが猫雑誌から出張版の依頼があったというネタで、現実はちょいちょいフィクションを超えるよね・・・。 → 蛇沢課長のM嬢 1 (サンデーGXコミックス)
6. 森下suu/ショートケーキケーキ

■【オススメ】高校生下宿ものだが、主人公の性格といい、 彼女が下宿に至るまでの経緯といい、他の作品とは違うユニークさがあり素晴らしい。 結果的に真の主人公が別に設定されているかのような話になっているのだが、 この作品ではそうしたイレギュラーな展開が綺麗にハマっている。 → ショートケーキケーキ 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
7. 真造圭伍/トーキョーエイリアンブラザーズ

■【オススメ】宇宙人ものか、上手な作家さんは よくやりたがるんだよなぁ、と思いながら読んだが、 兄弟ふたり出してきたところはさすがに巧い。器用な弟に不器用な兄。なぜ兄が送り込まれてきたのか、 その話を一巻巻末のエピソードで読者に公開して 巻またぎ。この構成も素晴らしい。 → トーキョーエイリアンブラザーズ 1 (ビッグコミックス)
8. 鈴木良雄/フルーツ宅配便


■【オススメ】この手の話はこれくらいの 一歩引いた絵で描くのがちょうど良いのかもしれない。 なお宅配のお話ではないので注意。デリヘルのお話です。 → フルーツ宅配便 1 (ビッグコミックス)
9. 馬場翁、輝竜司、かかし朝浩/蜘蛛ですが、なにか?

■【オススメ】トンデモ転生もの。 コミカライズ作品らしいが、これはマンガで読んだほうが面白さ倍増だろう。作画家さんは大変だろうが。 → 蜘蛛ですが、なにか? (1) (カドカワコミックス・エース)
10. 新川直司/さよなら私のクラマー

■【オススメ】まだ期待値込みのオススメではありますが。「四月は君の嘘」も良いが「 さよならフットボール 」 が大好きだった身には、その続編的作品ということで狂喜乱舞の一作。 → さよなら私のクラマー(1) (月刊少年マガジンコミックス)
今年の作品ではないので番外の2冊:
相場英雄、中山昌亮/書かずの753

■【オススメ】地方紙の記者はジャーナリストの前にローカリストなのだ。増刊だがビッグコミックオリジナル掲載らしい 大人で硬派な作品。→ 書かずの753(1) (ビッグコミックス)
草川為/世界で一番悪い魔女

■【オススメ】 学者と魔女のバディもの旅物語。 それぞれの人物に課す条件のつけかたが面白い。 草川氏の漫画は大好きです。電子版が紙書籍と同発だといいんだけど・・・ → 世界で一番悪い魔女 1 (花とゆめCOMICS)
以下は一巻完結もののベスト。こちらは旧作も含みます。
1. 岩本ナオ/金の国水の国

■【オススメ】いがみ合う2国で男女が出会う、 素敵だがリアリスティックなお伽話。 → 金の国 水の国 (フラワーコミックススペシャル)
2. 津田雅美/十年後、街のどこかで偶然に

■【オススメ】高校から10年後、 再開したオトナのお話。巧い! → 十年後、街のどこかで偶然に
3. 草川為/今日の恋のダイヤ

■【オススメ】人物が軽く繋がる、 恋をめぐる連作短編。著者だけに達者で、 いい読み心地。 → 今日の恋のダイヤ (花とゆめCOMICS)
4. こがたくう/宇宙のプロフィル

■【オススメ】 最近あまりないSF風味のファンタジー短編集。 → 宇宙のプロフィル (ヤンマガKCスペシャル)
5. 中川貴賀/リメインバッド

■【オススメ】悪徳警官か昔ながらの刑事ものかと 思わせて見事なツイストをかけてくる、 連続殺人犯探しの物語。正直反則技だが、 この構成は見事。絶品。→ リメインバッド (アフタヌーンKC)
6. ウチヤマユージ/よろこびのうた

■【オススメ】 老々介護の無理心中事件を追った記者が知った 真実とは。 素晴らしき逸品。 → よろこびのうた (イブニングコミックス)
7. 成瀬乙彦/ヒュプノス

■【オススメ】 彼の見る悪夢を他にも見ている者がいた。 宇宙人と精神世界で戦うダークファンタジー。 → ヒュプノス (ビッグコミックス)
8. 川辺蛙子/四月馬鹿

■【オススメ】可愛らしい青春ラブコメ。ここで終わってもいいけれど、 続きがあるなら読んでみたい。 → 四月馬鹿 (アクションコミックス)

9. スケラッコ/盆の国

■【オススメ】 霊の見える主人公が、同じ日を何度も何度も繰り返す。 → 盆の国 (torch comics)
10. つばな/ホブゴブリン 魔女とふたり

■【オススメ】夢想が暴走するファンタジー。 →ホブゴブリン 魔女とふたり (バーズコミックス)
【参考】
月間オススメ
2015年のベストセレクション
2014年のベストセレクション
2013年のベストセレクション 2013年のベストセレクション(全一巻本)
2012年のベストセレクション
2011年のベストセレクション
2010年のベストセレクション
2009年のベストセレクション
2008年のベストセレクション
2007年のベストセレクション
2006年のベストセレクション

2015年のベストセレクション

・2015年もありがとうございました。 レビュー対象を電子書籍にシフトしましたがタイムラグや価格差のない作品もあるため2016年は紙書籍と併行して購入しレビューする形に改めます。電子書籍は資産価値がないので紙書籍より2割以上は安くしてくれないと割が合いません。そのあたり消費者に優しくない考え方の出版社がありますね。そういう会社は極力軽視していきたいと思っております、はい。 また、献本いただけるというお申し出はこれまでお断りしてきたのですが購入漏れも多くありますのでご恵投をありがたく受けることに方針変更いたしました。更にお声がけいただき このマンガがすごい!WEB ならびに このマンガがすごい! 2016 にも参加させていただきました。  マンガに関係ない雑記も敢えて増やしましたが2016年からは日記ベースで、マンガのリリースやセールス情報と同じエントリのなかで処理していこうと思っております。 新年もよろしくお願い致します。
1. 九井諒子/ダンジョン飯
■【オススメ】 内容は、題名通り。クレイジーで超オススメ。 ダンジョンをめぐるファンタジーなのだが、数日に及ぶ冒険であれば食の話もあるだろう、ということで そこにグルメという要素を入れて、というかそこを強調して魔物など架空食材を調理する話に仕立てたところが 異常。こういう異常さが、エンタテインメントには必要なのだろう。
2. 沙村広明/波よ聞いてくれ
■【オススメ】今度こそ間違いなく、人の死なない漫画であるらしい。 その枠ハメの窮屈さからこそ生まれるものがある。 というか確実に面白い。 酔っ払ってくだまいて、その相手がラジオ局の人間で、素人なのにどもらず話がきちんとつながりオチもある主人公の話力に惚れるというお話。 マンガでラジオの話かよ、声も口調もわからねえよ読者は、と思いつつ、その内容が面白いのだから著者は凄い。あ、人が死なない漫画というのは著者があとがきだかで書いていました。信じております。
3. 眉月じゅん/恋は雨上がりのように
■【オススメ】 思春期の甘酸っぱさの、 その背景に挫折があるところが本作の隠し味。 アンニュイなイメージのある女子高生がバイト先のやもめ店長に惚れるという話。惚れた理由がはっきりしている 物語は素敵。現実の恋愛にはそこまでのロジックはないのが普通だろうけど。惚れられる中年店長が戸惑っているのもリアリティがあって、もどかしくも愛おしい話に仕上がっています。
4. カラスマタスク/ノー・ガンズ・ライフ
■【オススメ】ハードボイルド・サイバーパンク!格好良い。 主人公は、頭部が銃になっている人間。そういう人ばかりではないので異色な存在なのだが、 こういうSFらしい作品は昨今少ないので、話題に、人気になってほしい。まぁサイバーパンクの形をかりた ハードボイルドなので、読みやすいと思います。あ、絵は少々読みづらいかも・・・。でもそれを上回る魅力があります。
5. 大沼良太/地獄の教頭
■【オススメ】ハードコア教育漫画。 この教頭、教育界のゴルゴ13。狙った獲物は、逃さない。 教頭は地獄である、と言われるらしいが、この作品はそういう次元の話ではない。教育現場を守るため、彼は汚いことだろうと自分で手を突っ込み処理をしていく。 むちゃくちゃだが格好よい。綺麗事を言う教育者は、結局のところ、汚いところを触らなくてよいお立場だからだろうなとも思ったりする。とはいえここまではやらんでいいです。
6. 青木優/シンギュラー
■【オススメ】楽園はどこか遠くにあるのではない。 そこが楽園と思えば楽園なのだ。 地球滅亡を前に、地球外惑星に転送機で移住するという話。しかし本来は楽園などなく、別の目的でもって人々は人選されていた。という、こちらもSF。ところで、表紙のこの少女の目が、いいんだ。こういうぐっと来る目のキャラクターが出てくる作品はそれだけで引きこまれます。
7. マキヒロチ/吉祥寺だけが住みたい街ですか?
■【オススメ】吉祥寺・イズ・デッド。 不動産屋を舞台にしたマンガはたまにある。 街を描くマンガもある。その組み合わせとして描くのが普通の手法に思うが、 本作の場合は、吉祥寺をベースとしながらも吉祥寺を描かない、東京の街紹介漫画というのが意表をついていて面白い。
8. 安藤ゆき/町田くんの世界
■【オススメ】 この少年は格好良く愛おしい。 要領が悪くて自分自身も自覚している少年が主人公。そんな少年は自覚していない能力があって、 それは天性の人の良さからくる人たらしの能力だった。この人物の造形は、すごい。素晴らしい。
9. 外薗昌也、里見有/蟲姫
■【オススメ】誰もが美人と称する少女。しかし、 主人公にとって彼女に感じるのは、気持ち悪さだった。 マッドな人物が出てくるサイエンス・ミステリ的な側面もあり、 人間に擬態している昆虫に襲われるSFサスペンス的な側面もある。 まぁ、ヴァンパイアものに近いのだろう。 しっかりとした大きな物語が軸にあり、細かな設定が丁寧に作られた話は見事。 気持ち悪さを描く作品であり、その気持ち悪さを美人に抱くところが本作品の肝である。
10. こやまけいこ/かわうその自転車屋さん
■【オススメ】動物擬人化世界を舞台にしながら描くのは自転車話、 という組み合わせの妙。 主人公が坂の上にあるカフェ兼自転車屋に顔をだし、常連になる話。 そこは題名通り、小さなカワウソが店長をしている。 自転車オタクである彼のうんちくを交えた話が綴られていく。これを人間でやる話は結構あるので、動物にしたところがミソ。自転車も、動物のキャラも、手を抜いていないところに好感が持てます。
以下一巻セレクション

1. 有永イネ/鬼さん、どちら
2. 谷和野/魔法自家発電
3. 朔ユキ蔵/帰ってきたサチコさん
4. 安藤ゆき/昏倒少女
5. オノ・ナツメ /子連れ同心
6. カリブsong、田辺剛/サウダージ
7. 都陽子/地下アイドル、職場の男にバレまして
8. ウチヤマユージ/月光
9. はすまる /どすこいダイアリー
10. れのれの/ネットで会って30分で結婚を決めた話

【参考】
月間オススメ
2014年のベストセレクション
2013年のベストセレクション 2013年のベストセレクション(全一巻本)
2012年のベストセレクション
2011年のベストセレクション
2010年のベストセレクション
2009年のベストセレクション
2008年のベストセレクション
2007年のベストセレクション
2006年のベストセレクション


2014年のベストセレクション

・2014年も一年間ありがとうございました。今年は配送待ちのロス・積み上がる本の山・移動時の利便性という点から電子版に重点を移しました。結果、読みきれないのは変わりないにしても物理的な邪魔さは解消、思い立った時に買えるし携帯性も向上、ということで個人的には嬉しい一年となりました。一方で、いまだ紙と同時発売でない作品が多いため新刊キャッチアップという点では遅れをとる部分も出ております。ここはもう割り切って、来年も電子版の利便性を追求することとします。本当は電子版の場合、紙のように1巻から積み重ねていくみたいなことにしないで良い売り方がある筈だと思いますが、まぁそんなことを仕掛けてくるのは既存の出版社以外でしょうかね。では、今年のベストセレクションです。来年もご愛読よろしくお願い致します。

1. 矢樹純、加藤山羊/あいの結婚相談所
あいの結婚相談所 1 (ビッグコミックス).jpg ■【オススメ】「弁護士のくず」と同じ文法で作る、結婚相談所を舞台とした物語。 結婚は、条件に基づく契約である、という理念のもと、成約率100%を誇る結婚相談所の話。確かに、そういうものかもしれない。そんな設定の割に、話自体はハートウォーミング寄り、ただし鼻につく臭さがない。
2. 田島列島/子供はわかってあげない
子供はわかってあげない(上).jpg ■【オススメ】 高校を舞台にした、のんびりとした青春コメディの 類かと思ったのだが。大人になるための階段をのぼる冒険ジュブナイルの 一種だった。 上下巻完結の上巻。爽やかなジュブナイル。絵柄や構図のためか、興奮と距離を置いた描写で、とよ田みのる作品に近いテイストだろうか。新興宗教を絡めてやばい話に行くのかとおもいきや案外そうでもないのねという拍子抜けも含め、力の抜け具合が良い雰囲気を醸し出している。
3. 野村宗弘/満月エンドロール
満月エンドロール(上).jpg ■【オススメ】スイートな話かと思っていたら、 ほろ苦どころか、苦すぎる。 こちらも上下巻完結の上巻。著者特有のほんわかした浮世離れした雰囲気ではじまるが、途中から雲行きが怪しくなり、要するにこれが走馬灯の話であることがわかる。しかも、暗い。暗すぎる・・・のだが、この絵柄だと呑み込めてしまう。
4. 柏木ハルコ/健康で文化的な最低限度の生活
健康で文化的な最低限度の生活(1) ビッグコミックス.jpg ■【オススメ】また今度は凄いところに行ったなぁ・・・。 生活保護の現場を描く物語。 福祉の生活課という現場を描く話、という点でその題材に注目されて語られることも多いと思うが、実際の状況は踏まえつつも、あくまでもこれがフィクションであることを忘れずに編集部も著者も物語を転がして欲しいと願う一作。
5. 細野不二彦/商人道
商人道(1) (ビッグコミックス).jpg ■【オススメ】タイトルのルビはどうしようもなくダサいが、 内容もそういうモードだしそれで良いのか。 現代の商社マンを描くお話。それも題材がシェールガスでしかも舞台が中国というところが今現在の問題意識と合致しつつ現実の先を行っており、現実を後追いしただけの、(それは松下をモデルにしていた以上仕方がないのだろうが)「島耕作」シリーズとは心意気が違う。一方、後追いなのに結果的に不正解となる方向へ堂々と導いてしまっていた島耕作シリーズと比べ、本作の場合はどう転ぼうと主人公たちの運命が変わるだけ、というところがなかなかに上手いというか人が悪い作りである。その分、どう展開していくのか分からない面白さあり。
6. あずみきし/死役所
死役所 1巻.jpg ■【オススメ】 捻りのある死後の話。 ただインパクトある表紙は読者候補を遠ざけてしまいそう。 死者が死後に訪れる役所、という設定で構築する物語。死者にはそれぞれ異なる理由があるので、多様な話になるところが上手い。「お客様は仏様ですから」なんてセリフも用意しているところもニクイ。
7. Cuvie/絢爛たるグランドセーヌ
絢爛たるグランドセーヌ 1 (チャンピオンREDコミックス).jpg ■【オススメ】まっとうなバレエ漫画。 至極真っ当なバレエを描く少女漫画。槇村さとる作品か、と思うぐらい。それが、この掲載誌で、この著者で描かれていることへの軽い衝撃。ベストテンに入れたのはその衝撃のせいではありますが、衝撃抜きでもオススメの仕上がりです。
8. 手原和憲/夕空のクライフイズム
夕空のクライフイズム(1) (ビッグコミックス).jpg ■【オススメ】著者の目の付け所はサッカー漫画でも同様に上手い。 前作「ミル」の化け猫話のほのぼのさが素敵だった著者の次作はサッカーもの。似合うのかといえば、先にサッカー短篇集も出ているように、サッカーの勘所を掴んでうまく物語に仕立てている。「おおきく振りかぶって」のサッカー版に近い内容。一方で一筋縄ではいかなそうな裏のエピソードもありそうななさそうな、という伏線を用意しているところが最も上手い点かもしれない。
9. 蛇蔵/決してマネしないでください。
決してマネしないでください。(1).jpg ■【オススメ】科学実験学習マンガのような 内容。詰め込み具合が素敵な一冊。 主人公が専攻している物理学とはあんまり関係がないような気もするが、科学の話が実験交えて語られるユニークな作品。理系同士のオタクなサークルの中の話ではなくて、そういうことと無縁な存在を話の輪のなかに投げ込んでいるところがミソ。そうでありながら、手加減しないで色々なネタを突っ込んで読み応えあるものにしている点は、いかにも文系には受けそうな仕上がり。
10. 秋★枝/Wizard's Soul〜恋の聖戦〜
Wizards Soul 1 〜恋の聖戦(ジハード)〜 (コミックフラッパー).jpg ■【オススメ】架空のカードゲームの戦いを描いた作品。 なんだかわからないハズなのに、これはハマる。オススメです。 カードゲームのルール自体ろくに説明されずどんなシロモノかわからないのだけれど、それでも何か面白いように見えるところが凄い。

【参考】
月間オススメ
2013年のベストセレクション 2013年のベストセレクション(全一巻本)
2012年のベストセレクション
2011年のベストセレクション
2010年のベストセレクション
2009年のベストセレクション
2008年のベストセレクション
2007年のベストセレクション
2006年のベストセレクション


2013年のベストセレクション(全一巻本)

・新年あけましておめでとうございます。年内には全一巻もののベストセレクションまで辿りつけなかったので年越しましたが別記事でご紹介します。

1. 押見修造/志乃ちゃんは自分の名前が言えない
志乃ちゃんは自分の名前が言えない.jpg ■【オススメ】題名通り、衒いのないシンプルな青春もの。 なぜ衒いがないのかは、あとがきを読んで納得。
2. 尾崎かおり/神様がうそをつく
神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC).jpg ■【オススメ】苦い思春期を描く傑作。 絶品。
3. ふみふみこ/めめんと森
めめんと森 (フィールコミックス) (Feelコミックス).jpg ■【オススメ】人には奥深い闇がある。葬儀屋舞台の、仕事と恋の物語。
4. カレー沢薫/アンモラル・カスタマイズZ
アンモラル・カスタマイズZ.jpg ■【オススメ】女性ファッション誌編集部を舞台にした話・・・なのは確かなのだが。どこかで酷すぎるという評を読んだが確かにドイヒー。しかしそこが良い。
5. 萩原さおり/ノスタルジア
ノスタルジア (マーガレットコミックス).jpg ■【オススメ】表紙のテイストに興味を持ち読んでみると、想像通りの内容だった。乙女チックな作品好きにオススメ。
6. 草間さかえ/迷信話集 うつつのほとり
迷信話集 うつつのほとり(クロフネコミックス).jpg ■【オススメ】こどもの純粋な思いは大抵、場を乱し関係を壊してしまう方向に話を進めてしまうのだけれど、この作品では、そういう使われ方はしなかった。そこが素晴らしい。
7. 岡野史佳/深紅のエスカ
深紅のエスカ (ダイトコミックス 342).jpg ■【オススメ】超能力と戦争を絡めたミステリー。 ミスディレクションが巧い。
8. 草川為/僕の棺で晩餐を
僕の棺で晩餐を (花とゆめCOMICS).jpg ■【オススメ】ちょっと異色なアプローチの吸血鬼もの。
9. 武田一義/さよならタマちゃん
さよならタマちゃん (イブニングKC).jpg ■【オススメ】経験者でないと描けない名作。
10. 手原和憲/68m 手原和憲高校サッカー短編集
68m 手原和憲 高校サッカー短編集 (ビッグ コミックス).jpg ■【オススメ】「ミル 」の著者ということで、視点はアクションではなく、心にある。

【参考】
月間オススメ マンガ一巻読破
2012年のベストセレクション マンガ一巻読破
マンガ一巻読破 | 2011年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2010年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2009年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2008年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2007年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2006年のベストセレクション


2013年のベストセレクション

・2013年も一年間ありがとうございました。商売考えるなら12月も早めに締めて発表したほうがいいわけですが、まぁそういう発想以前に、読み残しが多いので少しでもフォローしようと思うと年末ギリギリ大晦日まで引っ張ることになりがちです。それでもかなり積み残していますが・・・。

・利便性をと思ってやっていました新刊リストもノイズだという意見もあるようで手間暇かかるのにバカバカしいのでやめまして過去記事も一切削除しました。その他色々整理しましてアドセンスは停止くらいましたが過去記事手をつけるのも面倒くさいので背を向けることにしてその他アフィリエイトも厳選しました。結果として運営費の捻出も厳しく、また邪魔にもなるので、来年は紙の書籍を極力買わずに電子書籍のみにシフトしようと思います。紙版ベースのセレクションは今年で最後でしょうか。

・このサイトは一巻新刊を中心に全一巻本も紹介しつつ、従来は2005年以降発売の新刊のみを追う新刊情報サイトとして手を付けていなかった旧作・名作の既刊一巻も取り上げていくことにしようかと思います。電子書籍化が進んだので入手しやすくなりましたし、新刊情報取り上げなければ時間が取られずに済みますので。来年も細々とは続けていく予定ですのでご愛顧いただければ幸いです。

・ではベストセレクション。変な設定であるとか、一捻りしたものが好きなので、そういうラインナップになりました。

1. 海野つなみ/逃げるは恥だが役に立つ
逃げるは恥だが役に立つ(1) (逃げるは恥だが役に立つ (1)).jpg ■【オススメ】偽装結婚物語。これは、非常に、面白い。 家政婦が欲しい男と、就職先が欲しい女、この二人が出会い契約結婚するという話。 その突飛な設定を納得させるだけの人物や描写があって面白い。
2. 森本梢子/高台家の人々
高台家の人々 1 (マーガレットコミックス).jpg ■【オススメ】著者にしては珍しく小奇麗な表紙で、 内容も今までと少し違う方を向いたコメディだが、 これはこれで面白い。 人の心を読める能力の持ち主である一家を描きつつも、狂言回し的な立ち位置に置いたのが、妙な妄想癖のある人物で、この子の妄想で能力のある一家が和むという仕上がりにしたところが巧い。
3. 坂本光陽、箸井地図/ハイリコ
ハイリコ 1 (ヤングジャンプコミックス).jpg ■【オススメ】天才的な記憶力と認識能力を持つ 探偵。そんな彼女に、青年は惚れた。 天才的な記憶力と認識能力を持つ人物を中心に据えているが、その子の発言が全て正しいものなのかどうか?というツイストもかけているのが魅力。
4. 聖千秋/四百四病の外
四百四病の外 1 (マーガレットコミックス).jpg ■【オススメ】話は少女漫画でも作りはオトナ。 問題教師を描く話、だがその監視のしごと自体が文部省による世間へのアピールにすぎない、ということも描く二重構造の話。そもそもターゲットは問題教師なのか、という点も含めた価値観の揺れに、主人公の恋愛もぶちこんだ無茶な作品。
5. 田辺イエロウ/BIRDMEN
BIRDMEN 1 (少年サンデーコミックス).jpg ■【オススメ】じっくりと描く映画のような導入部。週刊少年サンデー掲載に望む、 サンデーらしい作品。 なぜか超人になってしまった少年たち。でも報わなければいけないものもあり、しかしそういうことが一巻では提示されないという、長編の作りで描かれているところが好みで応援したくなる。
6. 鈴木大介、肥谷圭介/ギャングース
ギャングース(1).jpg ■【オススメ】「クロサギ」の後継者は、この作品だ。 戸籍のない、とまでは言わないが、虐げられた少年たちの話。そこで繰り広げるギャング話が、 裏稼業の人間を叩くという「クロサギ」の後継者的な内容である。
7. 十口了至、市丸いろは/ミリオンジョー
ミリオンジョー(1).jpg ■【オススメ】大ヒット漫画に携わる編集者とアシスタントの話・・・というと 面白く聞こえないが・・・。 大ヒット作品の連載中に作家が亡くなってしまったら、という発想のもと、内輪の人間で話を描き続けたらどうなるか、を描く作品。要するに影武者ものだが、「そんなことは許されたことではない」という圧力もある点で、時代劇における顔だけすげかえればよい影武者ものとはひと味違うテーマがある。
8. 岡村星/ラブラブエイリアン
ラブラブエイリアン(1) (ニチブンコミックス).jpg ■【オススメ】宇宙人ものに見せかけたガールズトークマンガ エイリアンものに見せかけたぶっちゃけガールズトーク漫画。面白いと思うのだけどなぁ。
9. ヤマモトマナブ/リピートアフターミー
リピートアフターミー(1) (ブレイドコミックス).jpg ■【オススメ】『恋はデジャ・ブ』あるいは「リプレイ」。同じ時間を繰り返す、二人の話。 リプレイものだが『リプレイ』や『アゲイン』ほどの長い時間ではなくて『恋はデジャ・ブ』並みの短い時間、ここで善行を起こすことで連関した事柄も変わっていく、という設定は最近とんとみかけないマジメな設計のSFである。→ ヤマモトマナブ氏の「リピートアフターミー」が旭川冨貴堂書店 末広店で絶賛発売中!
10. 井上佐藤/10DANCE
10DANCE 1 (バンブー・コミックス  麗人セレクション).jpg ■【オススメ】ガチンコ異色なダンス漫画。 一応BLものだが一巻の時点では寧ろ 主役ふたりの攻め受けを想像して楽しむ類の、 つまり一般的な、普通の作品にとどまっている。 BLものだがまじめにダンスも描いていて、一巻を読む限りはかなり面白い。

【参考】
月間オススメ マンガ一巻読破
2013年のベストセレクション マンガ一巻読破 2013年のベストセレクション(全一巻本) マンガ一巻読破
2012年のベストセレクション マンガ一巻読破
マンガ一巻読破 | 2011年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2010年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2009年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2008年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2007年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2006年のベストセレクション


2012年のベストセレクション

まだ読み残した本が例年どおりだいぶありますが、大晦日なのでもうこの辺で締めということで、2012年に読んだ作品の中から、当ブログがオススメする一巻本をご紹介します。とはいえ10作選ぶこと自体作為的ですし、順位なんてのは全体のバランス見てのものなので、月間オススメもあわせて御覧ください。

1. 貴家悠、橘賢一/ テラフォーマーズ
テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス).jpg
: 火星移住SFもの、そこにエイリアン的なものをぶちこむわけだが、それがゴキブリ、というところが邪道なようでSFとしてはまっとうな一品。主人公が最終的に助かるパニックアクションとしてではなく、むしろゴキブリが主人公なんじゃないかと思わせる構成も素敵。この一巻だけでも話は完結しているので一読をオススメ。
2. 弓月光/瞬きのソーニャ
瞬きのソーニャ 1 (ヤングジャンプコミックスGJ).jpg
: ソ連が遺伝子操作を駆使して生み出した人間兵器の、唯一の成功作であるのがヒロイン。彼女の逃亡人生を綴る作品で、エロ漫画というわけでもない。それを、ベテラン弓月光が描く、という意外性も魅力。
3. 河原和音、アルコ/俺物語!!
俺物語!! 1 (マーガレットコミックス).jpg
: 河原和音とアルコの組み合わせという異色コラボレーションによるわかりやすい化学反応は、どちらも単独の作品では主役にすることはなかろうという人物を中心に据えたことだろう。絵柄も笑いを狙っているだけではない。内容はまごうことなく少女マンガである。
4. コザキユースケ/どーにゃつ
どーにゃつ(1) (ヤングガンガンコミックススーパー) (ヤングガンガンコミックスSUPER).jpg
: ゆる系SF冒険活劇、とあるが、そうしたほうが売れるのか?体に穴があいた動物が人間の言葉をしゃべり活動する、その街は世紀末のように崩壊していて人がいない。シリアスな設定のなかで、脳天気な主人公が巻き込まれるサバイバル。ぬるく見えるが、結構すごい作品なのではないだろうか。
5. 西風/新説時代劇集 忍者 猿飛
新説時代劇集忍者猿飛 vol.1 (SPコミックス).jpg
: いまどきの画風ではないだろうが、それを、エンスー漫画で有名な著者がチャレンジしているところも含めて、漫画の裾の広がりを感じさせる一作。飄々とした時代劇である。
6. ドリヤス工場/あやかし古書庫と少女の魅宝
あやかし古書庫と少女の魅宝 (1) (REXコミックス).jpg
: 別にいま風の絵柄でも通用する話が、水木しげる的な絵で展開される。 ギャグでもカバーでもなくそうしたことを試みるのは著者にとって意味があるのかどうか、正直わからないが、漫画全体で見ればこういうものは重要。過去の遺産をどう転がしていくか、が文化のつながりと広がりを持つのだ。
7. 伊藤仁、楓月誠/Drc2
Drc2 1 (BLADE COMICS).jpg
: 中二病、を題材にした話はそう珍しくないが、それを本当の病気として扱い、しかも、夢想していることそのままに実現してしまう、というのはユニーク。ここまでネタを広げてやる勢いがいい。
8. 秋★枝/恋愛視角化現象
恋愛視角化現象 上 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ).jpg
: 結局クセのある作品やSFものをセレクトすることが多くなる年間オススメだが、本作もその性質はあり、ただしかわいらしい恋愛漫画。恋をするとツノがはえる、なんてのを可愛く描く。 下巻も読みました「恋愛視角化現象」
9. 琴葉とこ/メンヘラちゃん
メンヘラちゃん (上).jpg
: 精神不安定な子がヒロインの4コマ。おちゃらけたコメディとしてではなく、 シリアスな展開もある真面目な話。テーマにきちんと向き合って描いている、志の高い一作。
10. 永吉たける/ロボ犬ハチの家
ロボ犬ハチの家(1) (ライバルKC).jpg
: これも一点突破もの。ロボであるハチがあくまでも犬であると主張し続けるコメディ。元々の作品はオムニバス形式なのでぼやっとした印象だったが、本作のように 一本に絞って展開すると読み応えあって面白かった。こういう旧作の再活用も漫画にとっては重要に思う。
一巻完結本は10冊に絞るのが難儀だったが・・・
1. 円城寺真己/プラスチック・サージェリー
プラスチック・サージェリー (IKKI COMIX).jpg
: 今年読んだ本で一番わけが分からなかった。勢いのある一作。女性がホクロを気にして美容整形を受けたら、ホクロからビームが出るようになり、殺人兵器として追われることになる。そんな意味不明の話が勢いだけで展開されていく。この一冊、騙されたと思って読んでください。オススメします。
2. 穂積/式の前日
式の前日 (フラワーコミックス).jpg
: 評判の一冊。確かにそれも理解できる。読ませる仕掛けを作り、推理もののように表に出していないサゲが容易されている。表題作は、両者の関係が何なのか、を読者に考えさせながら綴っていくものであり、他の作品も同様。巧い。他の作品もぜひ読みたい著者の登場である。
3. 山中ヒコ/500年の営み
500年の営み (Feelコミックス オンブルー).jpg
: 壮大なBL。時を超えていく思いを描く作品であり、美しい。
4. 鈴木みそ/僕と日本が震えた日 
僕と日本が震えた日 (リュウコミックス).jpg
: 震災をテーマに、深いところ描くルポコミック。放射能について、冷静に科学的なアプローチをしているエッセイは、実は世間にそうはない。それは問題であるのだが、そのため本作の存在感は目立つ。確かに帯にあるとおり、ルポコミックの名匠といえるだろう。
5. 冬川智子/マスタード・チョコレート
マスタード・チョコレート.jpg
: 自分の居場所がない、と思っていたヒロインが、自分の居場所を見つけ出す話。けっしてこれが自分探しではなく、むしろありのままの自分をさらけ出し、認めてもらえる場所を探す話であることに注意したい。だからといってヒロインは自分で何もしないわけではなく、何かをしようと努力している。自分探し世代の話とは違う一作である。
6. 宮脇明子/ネロ〜Noir〜
ネロ~Noir (LGAコミックス).jpg
: パトラッシュの、あの、ネロをテーマにした話である。その話をもとに、作品を新たに創りあげてしまった。しかも、ダークな雰囲気をまとわせながら。物語は、ツイストをきかせて、復讐話だったはずが、読後感は悪くない。実に読ませる一品である。
7. 石井まゆみ/闇闇来るり
闇闇来るり (マーガレットコミックス).jpg
: 引き込まれる話。それが、え?ここで終わり・・・なの?と肩透かしを食らわせられた。その気持も皆様に味わっていただきたく、作品の質も当然高いので、改めてここでご紹介。
8. 石黒正数/外天楼
外天楼 (KCデラックス).jpg
: 脱力系かと思って読んでいたら、真面目を通り越して、シュールなSFになり、シリアスな結末に、狐に包まれた感じになる。なんなんだこれは・・・成功なのか、失敗なのか。あなたの目でお確か目を。
9. 中島守男/先生!!原稿下さい。
先生!!原稿下さい。 (KCデラックス).jpg
: こういう作品も入れておかないとね。箸休め。エロい作家と、担当の女子編集者という、その設定だけでやりとりするコントのようなコメディ。その設定の掘り下げ方がイイ。狭い世界のなかで話を転がしていくお手本のような仕上がり。
10. ひらのあゆ/島の人
島の人 (まんがタイムコミックス(オール2色版)).jpg
: この作品は、開始から10年以上かけて一冊にまとまった、という点がやはり注目されるところ。時の流れと乖離した無人島での話だけに、作品ともシンクロする。
以上がオススメです。ではまた2013年もこのサイトをよろしくお願い致します。

【参考】
マンガ一巻読破 | 2011年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2010年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2009年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2008年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2007年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2006年のベストセレクション


2011年のベストセレクション

2011年に読んだ作品の中から、当ブログがオススメする一巻本をご紹介します。

1. 岡村星/誘爆発作
誘爆発作(1) (シリウスコミックス).jpg
: SF風味あるサスペンスミステリ。小説では良くある話ではあるかもしれない。誘拐あるいは殺人といった事件に絡み、テレパシーを利用し事件を解決しようとする。しかしそれが直線的ではないところが現実的。能力を解決には直接使えず、迂回して遠回りしているのがユニークで、こうした設定でサスペンスを煽るのは非常に正しい。物語は直線的に語られても勢いはあるかもしれないが実はさほど面白いと感じない場合が多い。ただ単に言いたいことだけに突き進むようなものは話づくりとして違うのだろうな、と思わせる一作である。
2. 雲田はるこ/昭和元禄落語心中
昭和元禄落語心中(1) (KC×ITAN)
: 落語ものだが、噺自体あるいは芸事修行ものが多いなか、両者を含みつつ、違う物語の軸も用意して重層的に語る話はユニークで意欲的。雰囲気あり、読み進めるうちにその世界に没入していく、そんな魅力のある話くちである。シリアスな「タイガー&ドラゴン」というところか。
3. 影山理一/奇異太郎少年の妖怪絵日記
奇異太郎少年の妖怪絵日記 壱 (マイクロマガジン・コミックス) (マイクロマガジン☆コミックス)
: 内容が面白く絵本や絵物語の雰囲気であることもあり、昨今珍しい左開きというのも特徴的だが、ケータイ掲載の作品をどうやって書籍化するか、紙媒体でどう見せるか、にこだわった作りが嬉しい。単行本は連載をそのまま切り出せば良いというものではない。こういう努力をしている作品はそれだけでも評価したいが、本作は内容も良いので特にオススメ。
4. 逢坂みえこ/プロチチ 
プロチチ(1) (イブニングKC).jpg
: 専業主夫ものに、アスペルガーという難しい題材をかけ合わせた意欲作。仕掛けの妙にとどまらず、回を追うごと深くなっていく内容はお見事。難しい顔をして読むような内容とならず、基本コメディだが笑ったあとに残るものがある。
5. 小路啓之/ごっこ
ごっこ 1 (ジャンプコミックスデラックス)
: 擬似家族もの、というと最近良く見るが、そんな中こちらは滅多にないブラックな内容。ロリコンが幼女さらってきて、そういう目的だったのだがパパと呼ばれたことで前提が崩れていく、という、随分思い切った設定の話である。ここまで逆さに見て作った話がツマラナイはずがなく、なかなか奇妙な作品に仕上がっている。
6. 瀬川藤子/VIVO!
VIVO! 1 (マッグガーデンコミックス アヴァルスシリーズ).jpg
: 金八先生のような教師ばかりじゃ息が詰まる、というのがマンガ読者では主流の考え方なのではないかと思う。共感を持って読む人が多そうな、教師らしくない教師の話。しかし、そこがいいという生徒もいる。とはいえカリスマ化や神格化されるような教師ではない。そこが良い。 これは、学校通っているような子に読んでほしいなぁ。気が楽になる人もいるだろうから。
7. 今井大輔/ヒル
ヒル 1 (BUNCH COMICS).jpg
: 他人の家を痕跡残さず転々としていく「ヒル」の話。主人公がその自覚なく、しかし同類は多くいて、その同類から見ればルール違反な主人公は目を付けられる、という展開はある種不条理ゲームものに似ているのだが、しかし主人公は自らの意思でそのゲームの世界に身を投じているところが巻き込まれ型の話と違う。そうした設定に踏み込んだところを賞賛したい。
8. 松田洋子/ママゴト
ママゴト 1 (ビームコミックス).jpg
: 擬似家族ものは多いが、ファンタジーに流れがちであるなか、この作品は現実から足が離れることなく、つまり痛みを伴う話になっているところが凄い。ヒロインはそうはいっても今の時点では成功者といってもよい状態にある、という点で、痛すぎる話にはなっていないが、そもそも擬似でも家族を持つというのはある程度の生活基盤が必要なのだという話でもあり、それは厳しい現実を示してもいる。
9. ラズウェル細木/う
う(1) (モーニングKC)
: 思い切った作品。エッセイ含む食まわりのマンガを描く著者が今回チャレンジしたのは、「うなぎ」一辺倒の作品である。主人公はうなぎ好き、三食うなぎで構わない、という人物がいろんなうなぎの食べ方を試す。それで一巻作品が持つのか?と思うと、これが持つのだ。しかもワンパターンに陥らず。狭いところを掘っていくことで新しいものが生み出せるという一例である。
10. 森恒二/デストロイアンドレボリューション
デストロイアンドレボリューション 1 (ヤングジャンプコミックス)
: 超能力話。そしてそれを、壊すことに用いようという話である。革命というテーマは、今の日本にはふさわしい。内容がとにかく壊すというものではなく、段取りを踏んでいる。単にアジテートするだけの中身でない。
一巻完結本では
1. 西炯子/兄さんと僕
兄(アニ)さんと僕 (花とゆめCOMICS).jpg
: 落語の世界を描くが、その描いた話自体が落語噺のような洒脱さ、軽妙さ。著者のセンスがうまく発揮された一冊ではないか。
2. えすとえむ/うどんの女
うどんの女 (Feelコミックス).jpg
: うどんが取り持つ男女の話。その話も良いが、ここまでうどんをセクシャルに描いた作品はないのではなかろうか。
3. 松本藍/生きろ!モリタ
生きろ! モリタ (F COMICS)
: 援交すれすれ、出会い系から始まる物語はSM介した関係で、しかも彼女には彼氏はおり、とはいえ処女で、という、理想をぶち込んだ闇鍋のような設定を、うまく取り回し、理想的な落としかたまで持っていった。
4. 村上かつら/新人保育者物語 さくら 
新人保育者物語 さくら 保育の仕事がマンガでわかる (単行本).jpg
: 普通の漫画とは違うルートから生まれた作品。専門職むけの雑誌への掲載なのだが、普通にマンガとして読んでも完成している。著者の腕を改めて感じる一作。
5. 小坂俊史/遠野モノがたり
遠野モノがたり (バンブーコミックス)
: 舞台設定がユニークなご当地もの4コマ。著者自身の体験をベースにしているが、あくまでもエッセイマンガではなくフィクションとして構成しているところが、エッセイマンガだらけの昨今では逆に良い。
6. 宇仁田ゆみ/ノミノ
ノミノ
: 幸せというのは、目の前にあって、余計なことを考えずにそれを掴み、守ることを考えればいいのだな、というのは、誰しも人生振り返ってみると思うことだが、そうしたことを描いた作品。なんで、という疑問とか、これでいいのか、という自問とか、それを超えて、なにかあってもなんとかするんだ、なんとかすればいい、と覚悟する話に、確かにそうだよなぁと思う次第。
7. 逢坂みえこ/木村くんは男友だち
木村くんは男友だち (KCデラックス)
: 残酷な話ではあるのだ。既婚者のヒロインにとっては男ともだち。しかし彼にとっては彼女は忘れられない女なのである。そしてそのことを彼女は別に意識してもいない。 そんなコメディ。確かにそれは、コメディ、喜劇だ。 本当の意味でのコメディ、というのを久しぶりに読んだ気がする。
8. 谷口ジロー/ふらり。
ふらり。 (KCデラックス)
: 作品単独でも雰囲気はある。誰のことを描いているのか、が分かると、なるほどと思うのだが、そこには作中では敢えて触れていない。いや、誰のことかは見当のつくヒントはあるが、誰、というのをフィーチャーすることには意味がないということなのか。ここから他の書物などに広げて読み進めていくと良いのだろう。
9. 谷川史子/吐息と稲妻
吐息と稲妻 (りぼんマスコットコミックス)
: 表題作は反則まがい。とはいえ味があるのは確か。著者好きよりも著者作品読んだことない人にこそオススメか。
10. カツピロ/身内に○ヤがおりましてん。
身内に(ヤ)がおりましてん。 (BAMBOO ESSAY SELECTION)
: 題名どおりのエッセイもの。適度に遠い身内なので、ほどよい距離感で描かれていて面白い。怖いもの、という扱いでもなく、興味本位、という感じでもない。温かみを持って描かれているのは、まぁアバレル業界にそういう態度はダメだって言い出すお固い人もいそうだけれど、偏見持たずに読むと楽しめるはず。
がオススメ。

【参考】
マンガ一巻読破 | 2010年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2009年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2008年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2007年のベストセレクション
マンガ一巻読破 | 2006年のベストセレクション


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